マーケティング/マーケティング事例

首位が2社の異常事態!仁義なきビール戦争(4ページ目)

ビール市場全体が縮小傾向の中、第3のビール市場は急成長を持続。この急成長市場で主導権を握ろうとキリンとアサヒの両雄は激しい戦いを繰り広げる。そして、遂に第3のビール市場で首位が2社という異常事態に!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

4.第3のビールで首位が2社のカラクリ

アサヒは『選択と集中』を行ってキリンを出し抜く戦略を選んだ
第3のビールで“2つのブランドが売上No.1”というカラクリはその分類にあった。

実のところ第3のビールは2種類に分けられる。一つは、本来のビールの原料である麦芽を一切使用せず、大豆やエンドウ豆などを原料とする“その他醸造酒”。そして、もう一つが麦芽を使用した発泡酒にスピリッツや焼酎などをブレンドして製造する“リキュール”。

つまり、キリンの『のどごし<生>』は第3のビールで圧倒的首位に立つことはもちろんであるが“その他醸造酒”に分類され、一方アサヒの『クリアアサヒ』は第3のビールという括りでは『のどごし<生>』には及ばないものの、より細分化された“リキュール”のジャンルでは首位に立ったというわけだ。

数字的に見ていくと、『のどごし<生>』は昨年4086万ケースと第3のビールでは圧倒的なシェアを握る一方で、アサヒの『クリアアサヒ』は昨年3月の発売から驚異的な売上を実現し1412万ケース。

『クリアアサヒ』は急成長を遂げ、一躍第3のビール市場では『のどごし<生>』に続く第2位の地位に躍り出た格好だ。

そしてアサヒは“リキュール”に限定した市場で首位奪取という実績を盾に、“麦の新ジャンルNo.1”というプロモーションを展開したのである。

ただ、アサヒのこのいささか強引なプロモーションにライバル他社は「市場に混乱を来す」と難色を示す。そして、アサヒが成長市場である第3のビールで首位というイメージが定着するのを避けるために毎月公表していた出荷量を第3のビールにおいて種類別の内訳を公表しないという対抗策を講じた。

一方でアサヒは第3のビールの今後の成長を見据え、特にリキュール分野が将来有望と見るや“その他醸造酒”からは撤退し、経営資源を“リキュール”に集中させる戦略に打って出た。

今後は第3のビール分野において“その他醸造酒”で圧倒的なシェアを誇る『のどごし<生>』と“リキュール”で急成長し、経営資源を集中投下して更なる成長を目指す『クリアアサヒ』の各ジャンル首位同士の横綱対決が繰り広げられるのは間違いないだろう。

<次ページ>5.“No.1”マーケティングの秘訣
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