3.下取りで売上が上がる“からくり”
企業は顧客に来店してもらおうとあの手この手のサービスを展開している。 |
まず、一つ目には家庭にはたくさんの不用品が眠っているということが挙げられる。恐らく我々の家庭にあるもので8割ほどは日常使用することなく、いつかは使うだろうとか、廃棄するのも手間がかかるといった理由で放置されている不用品だ。この不用品に一つ1,050円の価値があるとすれば、店舗に足を運んでまで持ち込むインセンティブが働く。
続いて二つ目は、百貨店初の試みということで多くのマスメディアに取り上げられたことも、キャンペーン成功の大きな要因だ。テレビのニュースや新聞に取り上げられることにより、このキャンペーンを多くの人が知ることとなり、小田急百貨店に足を運んだことは間違いない。
そして、三つ目は現金で買取ではなく、自店でのみ使える“クーポン券”で価値を提供したことと言える。持ち込まれた靴には恐らく1,050円の価値はない。百貨店側も持ち込まれた靴をリサイクル販売するという考えは全くないはずだ。そこでクーポン券として渡しておけば、使用する際には必ず百貨店にお金が落ちる仕組みになっている。顧客心理として、お得になるクーポン券を手にすれば使いたいという欲求が生まれるのは当然のことであるし、不要な靴を持ち込んだ数だけ“スペース”が空くことになるので、そのスペースを埋めるために新たな商品を購入したいと思うことも自然の流れだ。
今や企業は莫大なコストを掛けて顧客に来店してもらおうと必死だ。家電量販店では来店するだけで現金として使えるポイントを付与するところもあるし、他にも来店するだけで500円の図書カードなどをプレゼントするという企業もある。
やはり、顧客が店舗に足を運んで初めて売上が上がるということを考えれば、今回の小田急百貨店のようにそれなりのコストを覚悟して店舗に足を運んでもらう仕組みを作ることが重要なポイントになるのだ。しかもクーポンであれば顧客が使用しない限りはコストとならず、インパクトのあるキャンペーンで来店した顧客は折角の機会だからと他の売り場でも購入する機会がアップする。
小田急百貨店では、家庭に眠る不用品に1,050円という付加価値を与え、その価値を他には逃さないように自店のみで利用できる“クーポン券”として提供したところが今回のキャンペーンの成功に繋がったと言える。
“下取りマーケティング”で成功しやすい企業とは?次ページではアンケート結果を基に“下取りマーケティング”で成功を収めやすい企業を検証していく。
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