マーケティング/マーケティング事例

プリウスvs.インサイトの仁義なき戦い(2ページ目)

今ハイブリッドカー戦争が熱い!次世代カーとして注目が集まるハイブリッドカーだが、既に激しい価格競争の様相を呈してきた。今回はトヨタとホンダの激しい争いにスポットを当てる!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

トヨタとホンダの仁義なき次世代カー戦争が勃発!

トヨタのディーラーではインサイトとの徹底した比較が展開される。
ハイブリッド車戦争にまず火をつけたのはホンダのインサイト。

2月6日の発売に際して、それまでは高級車のイメージが強かったハイブリッド車に大衆車並みの189万円という信じられない価格を設定すると話題が沸騰し、エコカー減税と相まって見る見る販売台数を伸ばした。

これに黙っていられないのがハイブリッド車ではプリウスを擁し、市場をリードしてきたトヨタ。まずは5月に予定していた新型の発売前に現行のプリウスの最低価格を、装備を削ったモデルで約190万円と43万円もの大幅な値下げに踏み切った。そして、5月には新モデルで性能を向上させたにもかかわらず、205万円と思いきった価格設定で続け様に対抗策を講じてきた。

ところが、プリウスvs.インサイト抗争は価格戦略のみならず、プロモーション戦略まで飛び火する。

トヨタは新型プリウスの市場投入に当たって、寸劇や漫画を活用してプリウスとインサイトの決定的な違いを消費者に印象付け、販売促進に繋げていったのだ。

素人にはわかりづらいかもしれないが、もともとプリウスとインサイトは同じ「ハイブリッド車」で括られていると言っても全く違う自動車だ。自動車自体の構造も違えば、特性や性能、乗り心地まで全く別物である。

専門的な用語で説明すれば、プリウスは「ストロングHV(ハイブリッド車)」であり、インサイトは「マイルドHV」だ。両者の決定的な違いは「ストロングHV」がガソリンを使用するエンジンと電気を使用するモーターを別々に駆動させることができるのに対して、「マイルドHV」はモーター単独で駆動することができず、常にエンジンを動かし続けなければならない。この違いは燃費に如実に表れる。発表された最高の燃費を比較してみると、プリウスが1リットル当たり38kmに対し、インサイトは30kmとなっている。

このように本来であれば、違うカテゴリーに属すると言ってもよい両車であるが、ハイブリッド車とひと括りにされたことでトヨタの容赦ないマーケティング戦略に繋がっていく。プリウスのハイブリッド車としての優位性を強調し、同程度の価格帯ならば絶対にインサイトではなくプリウスを選ぶべきと消費者に露骨に訴えかける戦略だ。

このトヨタのなりふり構わない戦略が功を奏し、5月の月間販売台数ではプリウスがトップを獲得したのに対して、インサイトは3位へとランクダウンしてしまう。

果たしてトヨタのこのマーケティング戦略は対インサイトだけに向けられたものだろうか?次ページではトヨタの将来を見据えた戦略に迫る!
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