オトコ香る。ヒットの要因
なぜ、『オトコ香る。』は生産が追いつかず販売を停止せざるを得ないまでにヒットしたのでしょうか? そこには、マーケティングを成功させる上で重要なヒントが隠されています。通常ガムは口臭や虫歯を防ぐために利用されますが、『オトコ香る。』では口臭を防ぐという機能よりも体臭を防ぐという機能に着目。噛めば数時間後に体の中からバラの香りが漂い始めるという、画期的な機能を提供しています。この機能は前作の『フワリンカ』で開発されたものですが、男性用にとっては初の試み。男の身だしなみガイドの首藤さんによれば男性は40歳を過ぎると独特の“オヤジ臭”である加齢臭が漂い始めるとのこと(加齢臭は40歳以上のオヤジだけになぜ臭う?女性に臭わない理由とは?)。この加齢臭を消すために香水というキツイ香りではなく、ほのかな香りを漂わせたいという中年男性の心を捉えることに成功したのです。
また、ターゲットを中年男性に絞り込むというセグメンテーション&ターゲティングも、業界では珍しいことです。一般的にガムの商品開発は、細かなセグメンテーションを行うことなく口臭予防や虫歯予防などの機能の観点から開発が行われます。一方、『オトコ香る。』は前作の『フワリンカ』同様セグメンテーション&ターゲティングをしっかり行って、加齢臭が気になり始める中年男性をメインターゲットにしているところがユニークと言えます。
顧客の声に耳を傾けることの重要性
しっかりと顧客の意見に耳を傾け真のニーズに対応すればヒット商品が生まれるかも? |
顧客の声に耳を傾けてヒットを飛ばした商品は、他にもバンダイが発売したおしゃべりをするぬいぐるみ『プリモプエル』があります。当初は、女子高生やOLをターゲットにして開発されたこの『プリモプエル』。お客様の声を分析すると、実に50歳前後の中高年女性からの声が非常に多いことに気づきます。なんと、子育てを終えた中高年女性が自分の子供のように『プリモプエル』をかわいがり、着せ替えの服を自作するなどまさに子育てごっこを楽しんでいるらしいのです。このような想定外の顧客の声に耳を傾け、バンダイは顧客同士が自分の『プリモプエル』を披露しあえるようなイベントを開催し、顧客のニーズに対応。その結果、『プリモプエル』は5年で100万体を超す大ヒット商品となりました。
売上というものは顧客からしか発生しませんが、ともすれば企業は顧客の真の声よりも自分本位のマーケティングを行ってしまうもの。この『オトコ香る。』や『プリモプエル』の成功事例は、いま一度顧客の声に素直に対応しているかを確認することによって、思いがけないヒット商品が生まれる可能性を示唆しているのではないでしょうか。