マーケティング/マーケティング事例

入手困難!幻のガム『オトコ香る。』って?

“オヤジ臭”が気になり始めた40代のちょいワル男を中心に、口コミで爆発的なヒットを記録した『オトコ香る。』。広告をしていないのに生産が追いつかず、販売中止まで追い込まれた理由とは? その裏側に迫ります!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

売れすぎで販売休止!幻のガム『オトコ香る。』

幻のガム『オトコ香る。』って?
なかなか手に入らない幻のガム『オトコ香る。』って?その正体は上の画像をクリック!
2006年9月2日の新聞朝刊各紙。異例のお詫び広告が掲載されました。それはある“ガム”が売れすぎて製造が追いつかず販売を休止するというもの。その“幻のガム”こそ、カネボウフーズが製造・販売する『オトコ香る。』。このガムを噛むと1、2時間後に皮膚の汗腺からバラの香りが漂い始め、体がほのかに甘い香りに包まれるというとっても不思議なガムなのです。

カネボウフーズは発売当初広告も一切出さず、販売目標も10億円がヒット商品の目安とされる業界で1億円と控えめな目標を設定。期待しない船出にも関わらず、『オトコ香る。』は40代以降の中年男性の口コミにより爆発的なヒットを記録。7月10日の発売以降、商品が売れに売れて7月下旬には1回目の販売停止に追い込まれました。その後、販売を再開したものの、“販売停止の伝説”が話題となり、8月28日にYahoo!のトップニュースに取り上げられるとブームが加速。再度販売を停止せざるをえない状況に……。

この幻のガム『オトコ香る。』、裏事情をお伝えすると実は最初からオリジナルで開発された商品ではなく、ある商品に対する想定外のお客様の声から開発されたもの。今回はこの『オトコ香る。』のヒットの裏側に迫ってみたいと思います。

オトコ香る。開発の経緯

『オトコ香る。』のもとになったのは、カネボウフーズから2005年8月に発売された女性向けのフレグランス・ガム&キャンディ『フワリンカ』。この『フワリンカ』はガムを噛むとバラの香りが、そしてキャンディを舐めるとバニラの香りが1、2時間後に体から漂い始めるという画期的な商品でした。このほのかな香りを漂わせるガム&キャンディは、香水をつけられない美容師や看護師、介護士などの接客業の女性に受けて大ヒット。テレビや大手ポータルサイトなど数々のメディアに取り上げられることによって口コミが広がり、1年を待たずして業界のヒット商品の目安である10億円の売上を達成しました。

このように発売後短期間で話題になった『フワリンカ』ですが、ターゲットである女性からの問い合わせに混じって、予想外にも中年男性から「女性向けのフワリンカを男性が食べても同じ効果があるんですか?」と言う声が多数寄せられたそうです。そこで、同社のマーケティング担当者は、加齢臭が気になり始めた中年男性にもほのかな香りで“オヤジ臭”を消し去りたいニーズがあるのではないかと仮説を立てたのです。これが『フワリンカ』をベースに『オトコ香る。』の開発に踏み切ることになった経緯と言うわけです。

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