マーケティング/マーケティング事例

モエ・エ・シャンドン~愛され続けるブランドの秘密(2ページ目)

東京国際映画祭の最中に華やかなイベントが開催された。主催者は「シネマに乾杯!」と称して、世界的なプロモーションを展開するモエ・エ・シャンドン。この世界最大のシャンパン企業は3世紀を超えて顧客の支持を受け続けているが、その秘密はどこにあるのだろうか? その秘密に迫る!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

品質へのこだわり、飽くなき挑戦

まず、モエ・エ・シャンドン成功の要因として、シャンパンの品質に対して飽くことのないこだわりを持っている点が挙げられる。インタビューの最中、ジャシェ氏からは「クオリティ」に関する発言が何度も繰り返された。その言葉からは、これまで築いてきたブランドの上にあぐらをかくことなく、常に最高のものを届け続けることによってお客様に評価されるという強い意志が感じられた。

常に斬新なことを取り入れたブランド構築 

パーティーでは、スカーレット・ヨハンソンをはじめ、日本で一番シャンパンの似合う俳優石田純一さんも出席

パーティーには、スカーレット・ヨハンソンをはじめ、日本で一番シャンパンの似合う俳優石田純一さんも出席

2009年で266年という約3世紀にわたる歴史を持ちながら、モエ・エ・シャンドンは常に斬新なことに挑戦し続けている。今回の「シネマに乾杯!」というプロモーションでは、業界で初めてハリウッド女優スカーレット・ヨハンソンをキャンペーンに起用し、周囲を驚かせた。

モエ・エ・シャンドンは、歴史と伝統が重んじられるシャンパン業界の中でも、タブーを恐れずに常に世の中の度肝を抜くようなことを思い切って取り入れる勇気を兼ね備えている。そして、世の人々に新鮮な驚きを与え続けることによって、常に時代の中で脚光を浴びる存在であろうとしているのではないだろうか。

顧客とともにブランドを育てる

特に印象的だったのが、モエ・エ・シャンドンの顧客と共にブランドを作り上げていきたいという姿勢だ。同社は歴史と伝統・格式のある企業だが、「モエ・エ・シャンドンとはこうあるべき」と顧客に押し付けるようなことはしていない。逆に顧客それぞれが、それぞれの「モエ・エ・シャンドン」のブランドイメージを創り上げることを喜んでいるかのようであった。

実際のところ、ブランドとは企業のみで作り上げるものでなく、顧客との協業の結果、顧客の心の中で形成されるものである。そして、企業が作り上げるブランドパワーと顧客の中で形成されるブランドバリューが同じになった時に、ブランド戦略は成功したと言える。まさにモエ・エ・シャンドンはこのブランド戦略を忠実に実践しているのだ。

モエ・エ・シャンドンの新たな挑戦

世界中の上流階級に愛され続けるモエ・エ・シャンドンであるが、今後は上流階級にかかわらず「世界中の至る所でお祝いの席にはモエ・エ・シャンドンが彩りを添える」という大きな夢を描く。

もともと日本人は生活水準が高い上にフランス文化に対する造詣も深く、なおかつ品質に対する要求レベルが世界一厳しい。そのため、日本市場で成功した製品は、取りも直さず世界で高い評価を獲得できることになる。そして、いつの日か「日本のすべての人々の喜びの瞬間に、モエ・エ・シャンドンがそこにある」というレベルにまで浸透することを目指す。

そのためには、日本人に対する新たなライフスタイルの提案も必要となろう。現状日本においてシャンパンは、結婚式やパーティなど特別な時の食前酒として親しまれているが、より日常的に飲んでもらうためには、週末に映画を大切な人と見た後に、1週間頑張ったご褒美として気軽に祝杯を上げるというイメージキャンペーンも効果を挙げるだろう。

モエ・エ・シャンドンの新たなブランドイメージを確立するこの挑戦が実を結んだ時、伝統と格式のある歴史にまた新たな時代の1ページが刻み込まれるに違いない。

■関連サイト
モエ・エ・シャンドン

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