マーケティング/マーケティング戦略・応用編

適切な流通網で売上を上げるプレイス戦略(2ページ目)

流通網の整備は企業にとって重要な課題です。いくら素晴らしい製品を適切な価格で、適切なプロモーションを通して顧客に伝えても実際に商品を手に取ることができなければ売上は立ちません。今回は顧客との接触機会を増やし、売上を上げるプレイス戦略について解説していきましょう。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

プレイス戦略で差別化を実現する 

飲料業界は自動販売機のきめ細やかな設置で差別化を図れる

飲料業界は自動販売機のきめ細やかな設置で差別化を図れる

流通網を適切に整備することはそれだけで差別化に繋がります。

たとえば、2009年10月5日付の日経新聞によれば、日本コカコーラは全国に98万台もの自動販売機網を整備しています。2位のサントリーが44万台ですから、実に2倍もの流通網を確保している計算になります。

コカコーラの自動販売機はもちろん自社の独占販売網ですから、他社の飲料を排除できます。この圧倒的な販売網で日本コカコーラは差別化を実現し、飲料業界において3割程度のシェアを握って、業界のリーダーとして君臨しています。

また、コカコーラのように全国に流通網を張り巡らさなくても、特定の地域に集中的に出店して、店舗の知名度や物流の効率性を高め、ライバル他社を圧倒するプレイス戦略もあります。この戦略は特に「ドミナント戦略」と呼ばれ、コンビニ業界でトップを快走するセブンイレブンジャパンなどが採用しています。

セブンイレブンは2009年12月末現在で全国に12553店舗もの出店を行っていますが、出店地域は38都道府県に留まり、四国4県を始めとして9県には全く店舗網がありません。流通網を全国に広げて商圏を拡大することは、一見すると売上を上げるための効果的な戦略のように思えますが、戦線を広げすぎて一店当たりの攻撃力が弱まり、ライバル企業の反撃を許してしまいます。それよりも、特定地域に集中的に出店して、ライバル企業の参入を防いだり、物流効率や広告効果を高めたりした方が競争に勝つ確率が飛躍的に高まるということになのです。
 

ブランド力を高めるプレイス戦略

プレイス戦略では、もちろんターゲットとする顧客が多く集まる場所に店舗を構えることが成功への近道と言えますが、違う観点からプレイス戦略を駆使することもできます。それはターゲット顧客がすでにその場所にいる、いないは関係なく、世間的に注目を浴びる場所に店舗を構えるという戦術です。

たとえば、日本マクドナルドは1971年、1号店を銀座三越内にオープンさせました。アメリカ本社からは、日本で成功するためにもアメリカ同様郊外に店舗を出店するよう指示がありましたが、創業者の藤田田氏が消費者の注目を集めるには、当時日本で流行の発信基地であった銀座が最適の場所と判断し、三越に直接交渉を持ちかけて、何とか1号店を銀座に開店することができたのです。この日本マクドナルドの銀座1号店は、藤田氏の狙い通り評判となり、マスメディアを通じてマクドナルドの名を全国に知らしめることになります。結果として、店舗網は瞬く間に全国へと拡大し、マクドナルド急成長の要因となったのです。

このようにプレイス戦略で、一等地に店舗を構え認知度を高める方法は今でも多くの企業が採用しています。最近でもH&Mやアバクロンビー&フィッチなど海外のカジュアル衣料チェーンが日本参入の足掛かりとして旗艦店を銀座に出店し話題を集めて、オープン時に長蛇の列ができたのは記憶に新しいところです。
 

適切な「チャネルミックス」を実現しよう 

直営店や卸売業者、小売店などの従来の手法に加えて、最近ではインターネットやモバイル技術の発達で店舗に足を運ぶことなくパソコンや携帯電話で直接メーカーから商品を購入する消費者も増加の一途を辿るなど、プレイス戦略の選択肢も格段に増えてきています。

プレイス戦略では自社独自、もしくは他社の流通網、いずれかに偏るのではなく、また店舗やインターネットなど複数のタイプの流通チャネルのバランスを考慮に入れながら、適切な流通網を構築していく「チャネルミックス」が重要なポイントになります。自社製品や市場の特性を踏まえて適切なプレイス戦略を実行することは、顧客との接点を増やすことにつながり、引いては確実に売上を上げる結果をもたらす最良の方法と言えるでしょう。
 

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