共有するのは「答え」か「問い」か
問いの共有がメンバーのアイディアと行動を引き出す |
たとえば、営業マンのチームを例にとってみましょう。「Aという商品を購入した顧客には、合わせてBという商品をお勧めする」ということを共有するのが「答え」を共有している例です。それに対し、「ある商品を購入した顧客にさらに必要となるものはないか、さらにお役に立てることはないか」という意識を共有するのが「問い」を共有している例です。
指示やティーチングがコミュニケーションの主流となっている組織では、メンバーは答えを共有し、コーチング的な関わりが主流となっている組織ではメンバーは問いを共有します。
答えを共有すると一定の行動を徹底、促進することはできますが、メンバーの創造性や可能性をシャットダウンしてしまいます。また、不測事態や未知の領域に出くわしたときに行き詰まってしまいます。
問いを共有するとメンバーの思考を刺激し、新たなアイディアや状況にあった行動を引き出すことができます。リーダーが効果的に問いの共有を促進すると、個々のスタッフのみならずチームの成長やリソースの蓄積を促すことができます。
マニュアル不要な組織とは?
ここで1つ、すばらしいサービスを提供すると評判のあるホテルをご紹介しましょう。このホテルで行うサービス向上のための研修では、「あなたはどのようなサービスをしてみたいか?」という問いに全員で答え続けます。出てくるアイディアはまさに玉石混淆。しかし、アイディアの否定や実行の検討は一切なし。最初から最後まで同じ問いを繰り返し、やがて研修は終了になります。
「まだサービスについて何も教えてもらっていないし、何も決まっていません」と不安がるメンバーも中にはいます。
そんなとき研修担当者はこう答えます。「教えられて、マニュアル通りにやっているのでは、サービスになりません。今日の体験を通して、あなたがたはどんなサービスをしたいか考えるようになりました。お客さまは、サービスしたいというスタッフの心意気に感動するんです。それに『問い』は共有されたので、あなたたちはどんなサービスをしてみたいか、これから考え続け、お互いに話すようになるでしょう」
このホテルでは研修直後のみならず、日頃からスタッフ間でサービスについて頻繁に意見が交わされ、また多くの新しいサービス案がスタッフから寄せられているそうです。