コーチング/人材育成・組織作り

自発性と応用力を育てるコーチング(2ページ目)

コーチングは従来の人材育成手法の代表格であるティーチングと何が違うのか? その特徴を明らかにするとともに、人材育成におけるコーチングの身近な活用例を紹介します。

平野 圭子

執筆者:平野 圭子

コーチングマネジメントガイド


人材育成手法としてのコーチングのメリットと限界

心構え
コーチ型の人材育成は相手の自発性に働きかける
コーチングは「コミュニケーションを通して、相手に自ら気づき、自発的な行動を促すこと」と定義できます。また、「上から知識を教える」のではなく、「共に学ぶ」という形で能力開発する取り組み方ということもできます。

スポーツにおける指導を例にとって考えてみましょう。スポーツにおいてもティーチング型の指導、コーチング型の指導があります。たとえば、野球のスイングを指導する場合、ティーチング型のトレーナーは握り方や打ち方、体勢などについて直したほうがいいことを指摘したり、理想的な形を示したりします。

一方、コーチング型トレーナーは「どのような球を打ちたいのか」などゴールイメージを引き出し、それに向けて「今うまくいっていることは何か」「どこを変えるといいか」「誰の打ち方をモデルにするか」などを引き出し、相手に考えさせ、相手の個性を活かしながら指導します。時にコーチング型トレーナーは野球以外での成功体験を引き出し、それを野球のスキルアップに活かすことを促しもします。このようにコーチング型の育成手法には、次のようなメリットがあります。

■相手の考える力を育て、自発性や応用力、再現性を高められる
できるようになるまでの方法を自分で考えるため、アイディアや実行に責任やモチベーションが生まれる。同時に考えるプロセスを他の領域にも活かすことができるため、応用力や再現性が高まる。

■相手の可能性を引き出すことができる
共に考えるプロセスのため、教える側、教えられる側双方のアイディアや経験が活かされる。また、やりとりを通して相乗効果を発揮することもできる。

■相手の個性を活かすことができる
相手の個性に合わせた形でスキルアップを促すので、相手のモチベーションやスピードが高まる。また多様性を持ったチームをつくることができる。

一方、コーチングも良いことばかりではく、次のような限界があります。

■ある程度の時間がかかる
相手に考えさせたり、そのための双方向なやり取りが必要になるので、場合によってはティーチングの倍以上時間がかかる場合もある。ただし、そのやり取りのプロセスが自発性やその人らしさに繋がり、受け身のティーチングに比べ行動や成長のスピードが高まる場合もある。

■一度に大勢を育成できない
個別対応を必要とするため、理想的には1対1、グループ形式でも少人数でしか一度に実施できない。

■方法や価値観が多様化するので、対応やマネジメントが複雑になる
個性を尊重したり、教える側が想定していなかった方法や答えが出てくる場合もあるので、一律で対応することができない。

■相手に全く知識や経験がない場合、答えを引き出すことができない
たとえば、全くパソコンの使い方を知らない人に「どうすれば文章作成できる?」と投げかけても答えは出てこない。コーチングを用いるには相手にある程度の知識や体験、もしくは想像力でカバーできるような疑似体験がないと難しい。
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