若手に広がる「3つの病」
次に挙げる「3つの病」は、今皆さんがどんなふうな課題認識を持っているのか、確認するために、私がリサーチ・分析した結果です。【負け組編入恐怖症】
・負け組になったら、「安全の欲求」も不安な生活水準に陥ってしまうという意識に縛られる
・スキルを身につけないと負け組になるという強迫観念にとらわれる
・年金はもらえると思っていないため、早く1億円を貯めたい
【戦略不在症候群】
・全てのスキルを、今すぐ全部モノにしたいと思う
・見境なく流行のビジネススキルに手を出す
【目標モデル喪失症】
・自分の目指すべき成功モデルが見つからない
・目標となる先輩や上司が身近にいない
これらの3つの病が、下の左図のように、悪循環を生み出すサイクルを構成しているようです。「負け組編入恐怖症」による危機感から、闇雲にスキルを勉強しても、「戦略不在症候群」に陥るだけ。しかも、「目標モデル喪失症」で、いくら勉強しても、自分の成長後の姿が見えてこない。すると、いくら頑張っても、成長を確認できないため、『不安感』はいっこうに消えず、返って、『焦り』や『疲労感』が増すばかりとなります。思い当たる箇所はありませんか?
次に右の図を見てください。危機感をバネにして、良い循環に転換するには、次のステップで、自分で「成長戦略」を描くことです。「目標モデル」が具体的に存在しないときには、自分で設定するしかありません。ここで大切なことは、結果として自分しか出来ないことを探し、差別化した自分の姿を「目標モデル」に置くことです。
悪循環を断ち切るためには、
“焦り”から、やみくもに学ぶのを、ただちにやめることです。
戦略とは、「限られた時間資源の中で、学習対象を絞り込み、捨てる」という発想です。
危機感だけを抱えて、自信のないままに、次々呈示される“ビジネススキル”の大量消費者の1人に成り下がってはいけません。
どのように自分を成長させることが、ベストであり必要なことなのか。差別化を図るためには、何を学び、何を学びの対象から捨てるのか、じっくりと考えてみることです。
同じことができる人間は2人はいらないわけで、究極は、唯一無二の存在になることです。そのためには、自分の得意分野を見つけ、そこにフォーカスすることです。差別化戦略については、2回目の「個人の成長戦略の立て方」で、詳しくお話します。
これからの企業社会で求められる人材とは
それでは次に、成長戦略を描くためのヒントとして、企業戦略の動向について押さえておきたいと思います。1990年代後半以降の日本企業は、生き残るために非常な苦しみを経験しました。コアのビジネスに集中し、不要な事業を閉鎖・売却し、撤退をはかりました。「選択と集中」の戦略です。本業に回帰して、そこで生き残るために、リストラによる決死のコスト削減を実行しました。
では、選択と集中、コスト削減に伴うリストラが一段落した今、企業は何に悩んでいるでしょうか。それは、「成長戦略」です。
いくらコストカットをしても、それは、ボトム・ライン・プロフィット(純利益)を向上させるだけにとどまります。その上で、売上、すなわちトップ・ラインを成長させなければ、企業価値は上がりません。
いや、成長を志向していかないと、企業は存続していけないと言ったほうが正解です。そういった切迫感から、コスト削減で生き延びた企業は、今、必死に新たな成長を目指した戦いの場に躍り出ています。
企業の成長戦略を考えるとき、ポイントは4つあります。
1.消費者の進化:かつての贅沢品が大衆化する市場での厳しい戦い方を考えること
2.差別化の視点:イノベーション(=創造)による差別化を実現する
3.成長のスタイル:低コストの運営体質を毀損せずに利益も成長させる
4.人材:経営者人材の質と量の確保が、成長戦略の成功の条件となる
企業の成長戦略をつきつめていくと、経営者が勤まる人材が多数いないことには、その実行もおぼつかないということになります。結局、経営資源の一番は「人」、企業の成長戦略も人材次第ということにつきます。
これからの企業社会では、出番があればいつでも経営ができる能力と意識が必要になります。このことを、是非インプットしておいてください。
今後、企業間で益々、才能ある人材の獲得合戦が起こるでしょう。特に若くしてイノベーションの発想と経営者スキルを身につけた人材は、引く手あまたになることは間違いありません。
第1回目は、ここで終了です。イントロダクションとして、「自らの成長戦略の必要性」についてお話をしました。次回は、メインテーマに迫ります。「個人の成長戦略の立て方」について徹底アドバイスをおこないます。お楽しみに!
■次回の予告
第2回:個人の成長戦略のたて方を徹底アドバイス
・自分の成長戦略を構築しよう!(成長戦略マトリックス)
・ビジネススキルより差別化の戦略を
・経営者人材をめざそう
第3回:成長軌道へシフトするための仕事術
・反常識的な仕事術のすすめ
・アウトプット学習法
・30分で分かるMBA
・成長するための思考法
・心のマネジメント
30代に限らず、これからの自分のキャリア設計を真剣に考えている方へ是非おすすめの一冊です。
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