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売れる本の書き方講座【連載6】(3ページ目)

「売れる本の書き方講座」最終回です。気になる印税のお話です。よく10%と聞きますが、新人の場合、実際のところはどうなのでしょうか。

執筆者:塚田 祐子

新人の初版、刷部数はどのくらい?

売れる本の書き方
さて、印税率が確定しても、発行部数が多くなれば…。期待したいところです。では、新人の場合、初版の刷部数はどのくらいになるか。

最近は、最初にドンと刷るのではなく、細かく重版をかけていくやり方が増えています。大手と中小では刷部数はかなり違います。

中堅、中小だと2000部くらいが標準だと思います。中には1000部位でスタートする場合もあります。大手だと7000~8000部でしょう。全国津々浦々までは無理ですが、地方の中核都市くらいまで配本しようとすると、物理的にこのくらいは必要です。

より正確にいうと、2000部でも全国配本は可能ですが、これでは書店の良い場所に陳列する、「平積み」ができないからです。新人の場合、いきなり1万部刷るなんてことはありえません。小部数で堅実スタート、刷増を期待、ということになります。

それでは、以上のところで何かご質問はありますか?


■□ 質議応答タイム □■


ガイド:
印税率の相場として、10%で試算してよいものだと思っていましたが、力関係でビミョ~なんですね。無名の新人であれば、未知数ですから、当然といえば当然です。

新人が本を出して、どの位売れれば、出版社的には成功した(採算がとれる)といえますか?

大森:
これは部数だけでは判断できません。例えば、1,300円で8,000部が採算ラインとします。これが、1,600円になると、7,000部に、2,000円なら5,000部という具合に動きます。専門性が強かったり、マニアなら高くても買う種類の本だと、さらに部数を抑え、定価を上げるという戦略をとることがあります。

逆に定価が安い、新書、文庫は、かなり刷らないと採算が取れません。採算ラインがいったいどれくらいなのかは、出版社によってかなり差があるはずです。ズバリいうと、大手なら定価1,300~1,400円で、実売1万部くらいです。ハードルは極めて高いです。

1万部出る本は、そんなにありません。にもかかわらず、なぜ売れない本があんなに出るのだろう。疑問を持たれる方も多いと思います。それは、20万とか30万とか売れるベストセラーの儲けで、赤字分を埋め合わせしているからです。

これが零細な版元になると、3,000部でも売り切れば、利益がでるかもしれません。ただ、こうした出版社が大ベストセラーを生み出す可能性は低いのも確かでしょう。

ガイド:
出版する条件として、著者の買取りが前提とか、売れ残った場合には買取る、みたいなことは、実際によくあるのでしょうか。

大森:
よくとはいいませんが、たまにあります。写真集とか専門書の場合、最初から「1000部買い上げ」みたいな条件が付いているケースは珍しくありません。細かい条件を記した契約書を交わすこともあります。

ガイド:
これは全く素朴な疑問ですが、売れ残った本はどうなるんですか。

大森:
書店から返品され、倉庫に入ります。その後、売れ行きがかんばしくなければ、処分されます。業界用語では「断裁」といいます。その前に、筆者には「断裁しますがよろしいですか」という問い合わせが行き、筆者が引き取ることが多いようです。

ガイド:
「契約書」は、必ず取り交わすものですか? 業界の慣習として、口約束だけで話を進めるということもありますか? また、そういう会社は、怪しいとか…。

大森:
残念ながら出版業界は遅れています。ほとんど、口約束です。契約書を交わすことはほとんどありません。ただ、ベストセラーを連発し、立場が強い編集プロダクションの場合、印税何パーセント、「重版からはさらに上乗せ」みたいな契約が結ばれることがあります。

しかし、通常の商取引と同様に、印税の割合、支払条件、増刷時の取り決めなど、出版契約の基本的条項となる部分を、確認しておくことは必要です。

ガイド:
日本ではまだまだ、契約書が当たり前にならないようです。しかし、言った言わないとか、一方的な条件の変更とか、後々のトラブルを避けるために、事前にどんな取り決め事項が必要か、または確認しておくべきかを、知っておくことが必要になりますね。
※参考:「
出版契約書ひな型」(社団法人日本書籍出版協会作成)

大森:
「売れる本の書き方」。話す小生にとっても、なかなか難しいテーマでした。お役に立てたかどうか。(最近出た類書に比べると、出版社の現状に即したものになっているのは間違いありません。)

読み続けるうち、「私には、ベストセラーなんかとても無理」と元気をなくされた方がいらっしゃるかも知れません。でも、そう悲観することはありません。ロバート・アレンの著書、「億万長者入門」(フォレスト出版)の中に、こんな一節があります。

『だれでも自分のなかに「1冊の優れた本」を抱えている、というのが私の持論です。あなたの頭の中には今、すでに一生続く収入の流れに変えるだけの十分な情報と経験が存在しています。』

“ええー、本当かなぁ。”そう感じた方は、この本を読むことをお勧めします。(後半はフリーの方にとっても参考になる部分が多いと思います。)


■連載のバックナンバー
第1回:出版企画は、誰がどのように立てているのか?
第2回:売れる本の3要素とは
第3回:何をテーマに書いたら売れる?
第4回:出版社は、どうやって書き手を見つけているのか
第5回:出版社への売込み方法
第6回:気になる印税、新人は何%?

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