■【売れる本の書き方講座】バックナンバー:
【第1回】出版企画は、誰がどのように立てているのか?



【第2回】売れる本の3要素とは?

「売れる本の書き方講座」第2回目です。今回は、どんな本が売れるのか、というテーマにせまります。

売れる本の書き方


<INDEX>
どんな本が売れるのか
売れる要素の3本柱、トップは?
買ってもらえるかどうかは「書き出し」で決まる!
質議応答タイム

<大森千明氏プロフィール>
1971年朝日新聞入社。経済記者としてスタート。95年にアエラ編集長。その後出版部門に移り、週刊朝日編集長を務める。2001年1月朝日新聞の出版部門を統括する出版本部長に就任。03年2月から出版担当付。03年4月から、帝京平成大学非常勤講師。著書に『不自由経済』『嵐の中のサラリーマン』(いずれも共著、朝日新聞社刊)等がある。

どんな本が売れるのか

「どんな本が売れるのか」について分析した本が出たことがありました。「ベストセラーの方程式」というタイトルだったと記憶しています。当然のことながら、公式はありません。それどころか、ベテラン編集者でも読みきれないことがしばしばです。

しかし、いくつか要素はあります。その一つが、当たり前ですが、中身です。読んで「おもしろい」「感動した」「笑える」、実用書であれば「知りたい情報が満載」「商売の役に立った」など、何か訴えるものがないとベストセラーになりません。最低限、「おや?」とか「へぇ~」とかが欲しいのです。

ただ、中身がよければ必ず売れるかというと、そうはなりません。いい本、良書が必ずしも売れる本ではないのです。

例えば、「がんの闘病記」。何回も手術の末、死の淵から生還。涙なしには読めません。素人が原稿に目を通すと、「必ず売れます!」と言い始めます。ベテラン編集者でも「ひょっとしたら?」と甘く考えてしまいます。ところが、大体は売れません。

まず、「がん」関連の本はたくさん出版されています。企画会議にこの種の企画が出されるのは意外に多いのです。これだけ類書があふれかえっているご時世です。何か従来に無いものがあるとか、プラスアルファがないとまず無理です。

「編集者は第一読者」とよく言われます。編集者が読んで、感じるものがなければ、その段階で消えるしかありません。

昔は新聞、とりわけ朝日新聞の書評欄に取り上げられると販売部数が伸びる、ベストセラーになる、と言われていました。今でもかなり効果はありますが、テレビにはかないません。

テレビ朝日に「徹子の部屋」という番組があります。黒柳徹子さんがゲストを呼んでおしゃべりをするのですが、「本を出した」ことが出演のきっかけになるケースは多いのです。

放映後にぐんと売れ行きが伸びます。それでベストセラーになったことは、小生が知っているだけでも数例はあります。ただ、テレビに出れば、それだけでベストセラーになるかといえば、それは誤りです。出演したのにさっぱりという例も少なくありません。やはり、売れるには中身です。   

売れる要素の3本柱、トップは?

売れる本の3要素
第二は「タイトル」です。「書き出し」と並んで、実はこれが要素のトップかもしれません。

書店で本を買う人の大多数は衝動買いです。本屋さんでどの本を買おうかな、と迷っている自分を想像してみてください。まず、何に目が行きますか?

表紙でしょう。とりわけ、タイトルだと思います。表紙のデザインの影響がないとはいいませんが、タイトルに訴えるもの、インパクトがなければ、手に取ることがありません。中身に入る前に、アウト! 戦わずして敗れる、といったところです。

本屋さんの店頭以外では、新聞広告をみて買う例が多いでしょう。タイトルを見ただけで、「これはいいや」と判断していませんか。そうです。タイトルこそ、ベストセラーの第一関門なのです。

書き手の付けた原題が採用されることはまずありません。編集者は“売れるタイトルづくり”にそれこそ心血を注ぎます。夜寝る前に考え、電車の中吊り広告を見ながら苦吟する。思いついたら、すぐメモを取る。家に帰る途中タイトルのことばかりに集中していたため、電信柱にぶつかったとか、あやうく交通事故を起こしそうになったとか。編集者は誰でもこんな体験をしています。

では、どんなタイトルだったら売れるのか。これが難しい。最近はかなりの版元が「タイトル会議」を開催しているほどです。

社長をだせ! 実録クレームとの死闘
最近発行された本の中で、小生が「これは売れる!」と確信したものをひとつだけ紹介しましょう。川田茂雄さんという人が出した「社長をだせ! 実録クレームとの死闘」(宝島社)です。

まず、「社長をだせ!」がいいですね。サラリーマンが現場で一番苦労するもの。そのひとつがクレームです。それも「上司をだせ」とか「社長にいうぞ」といったもので悩まされている。「被害」にあっているサラリーマンの胸にぐっとくるのです。それと、「実録」が迫力を出します。

読者が読みたいのは論文や批評ではありません。タイトルはおもしろいが、読んでみると「なーんだ」という本。筆者の体験が入ってないからです。この点、読者に「間違いありませんよ」と保証しているのと同じです。安心して買えるのです。

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