【第1回】出版企画は、誰がどのように立てているのか?
【第2回】売れる本の3要素とは
【第3回】何をテーマに書いたら売れる?
「売れる本の書き方講座」第3回目です。前回は「どんな本が売れるのか--売れる本の3要素」についてお話をいただきました。それを踏まえて今回の講義は、では「どんなテーマを題材に書いたらよいのか?」という核心部分についてお伺いします。
<INDEX>
・何が売れそうか
・現在売れている本の共通点は?
・「生き方プラスお金」モノが強い
・ビジネス分野で売れている本のテーマとは
・売れる本のテーマを予想するとするなら
・自分に書けるテーマを探すには
・質議応答タイム
<大森千明氏プロフィール>
1971年朝日新聞入社。経済記者としてスタート。95年にアエラ編集長。その後出版部門に移り、週刊朝日編集長を務める。2001年1月朝日新聞の出版部門を統括する出版本部長に就任。03年2月から出版担当付。03年4月から、帝京平成大学非常勤講師。著書に『不自由経済』『嵐の中のサラリーマン』(いずれも共著、朝日新聞社刊)等がある。
何が売れそうか
今どんな本が売れているでしょうか。大手書店チェーン、紀伊国屋の「ベストセラーランキング」(パブラインといいます)をのぞいてみます。実はこれ、出版界にとっては大変な出来事。ベストセラーランキングの5位以内に二つも文学作品が入るなど、ここ何年か聞いたことがないからです。もっとも、20歳前後の若い女性、という話題性、中身も新鮮とくれば、売れないわけはありません。
実際、芥川賞特集が載った月刊「文芸春秋」は完全に売り切れ、刷り増したそうです。合計120万部とかで、不況にあえぐ出版業界には「干天の慈雨」でした。ただ、ベスト30を見ると、ほかには「文芸」はありません。
第2位は村上龍の「13歳のハローワーク」ですが、これは文学作品とは呼べません。「文学」の売れ行きが回復したというよりは、一過性のブームの可能性が強いと思われます。
文学が売れなくなったのは、かなり前からの話です。1997年の年間ベストセラーはこんな具合でした。
第1位、渡辺淳一「失楽園上下」。次が、妹尾河童の「少年H上下」、第3位は「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎の順でした。もちろん、文学界1、2のヒットメーカーの渡辺淳一と浅田次郎だから当然ともいえます。
また、「失楽園」についていえば、性表現の過激さから話題になっていたことなど、理屈は色々つけられます。しかし、この後、文学作品がランキングの上位にくることはほとんどありません。例外は横山秀夫くらいでしょうか。
とりわけ「純文学」は不振を極めています。古典もさっぱりです。芥川龍之介が消えてもそれほど驚きはありませんが、夏目漱石が学生に全然売れないとなるとショックです。いずれ、電子書籍に移行していくしかない、というのが一般的な見方です。
現在売れている本の共通点は?
さて、では何が売れているのかというと、それがさっぱり法則性はないのです。ただ、ジャンルによってヒットが多いものはあります。2003年度の年間ランキングを見てみましょう。■2003年度ベストセラー総合(トーハン調べ)
※書名/著者/出版社の順。
1. バカの壁/養老孟司/新潮社
2. 世界の中心で、愛をさけぶ/片山恭一/小学館
3. トリビアの泉へえ~の本(1)(2)(3)(4)/フジテレビトリビア普及委員会編/講談社
4. ベラベラブック2/スマステーション2/マガジンハウス
5. 開放区/木村拓哉/集英社
6. 新・女性抄/池田大作/潮出版社
7. 大悟の法/大川隆法/幸福の科学出版
8. マンガ金正日入門/李友情作・漫画 李英和訳/飛鳥新社
9. ポケットモンスタールビー・ポケットモンスターサファイアシナリオクリアBOOK/NintendoDREAM編集部編/毎日コミュニケーションズ
10.ダイエットSHINGO/香取慎吾/マガジンハウス
11.ファイナルファンタジーX-2アルティマニア/デジキューブ編/デジキューブ
12.ポケットモンスタールビー・サファイア/メディアファクトリー
13.嘘つき男と泣き虫女/アラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ 藤井留美訳/主婦の友社
14.祇園の教訓」岩崎峰子/幻冬舎
15.ポケットモンスタールビー・サファイア 公式ポケモン図鑑完成ガイド/メディアファクトリー
16.スクウェア公式ファイナルファンタジーX-2/デジキューブ
17.ベラベラプックVo1.1〔青版〕/ぴあ
18.学カは家庭で伸びる/陰山英男/小学館
19.体を温めると病気は必ず治る/石原結實/三笠書房
20.真・三國無双3コンプリートガイド(上下)/コーエー
これを見るとすぐ分かるのは、20のうち6つがゲーム関連です。続いて、「トリビア」まで入れれば、タレント本が5つ。後は宗教関連が2つといった具合です。
この3つの分野が強い傾向はかなり前から続いています。これ以外の本だと、なぜ売れたのかを正確に分析するのは至難の業でしょう。
そこをあえて分析すると…、次ページへ続きます>>