<立読みコーナー>
【1】
トヨタは、その生産のノウハウを世界に向けてオープンにしてきた。そして世界中の企業がそれを導入した。にもかかわらずそれを再現できた企業は皆無だ。
理由は、公開されたノウハウは「トヨタ方式」というべき「企業革新」の結果として新しく生まれた「生産方式」の一つに過ぎなかったからだ。
「トヨタ方式」とは「生産方式」でも「改善方式」でもないのだ。それはシステムを刻々と、しかも自主的に変化させ続ける「企業革新方式」のことである。
そして、注目すべきは、それが日本の経済風土に合うように編み出されたオリジナルな「日本的イノベーション方式」であることである。
【2】
欧米では、全体のあるべき姿(理想)をまず描き、計画を立て、分割した部分を組み合わせて全体をつくり上げる。
一方日本では、まずありたい全体の形(願い)を描き、それを実現するためによりよい部分をいくつかつくる。それを寄せ集めて全体に近づけていく。
これを体現したトヨタ的アプローチでは、常識はずれのテーマであっても「まずはやってみる」。するとできることがある。行動すると解決策が出てくるのだ。
欧米のように最初から綿密な計画を立てて展開しようとすると、常識はずれのテーマは設定できない。日本式は計画があいまいだから踏み込んでいけるのだ。
【3】
日本的経営の“組織力”は「みんなで歩調を合わせる」点で枠にはまった官僚主義に移行しやすい。しかしトヨタは日本的な経営をしながらも進化できた。
理由は、人の成長を重視し、そのための努力を惜しまなかったからだ。特に人が自発的に自分の能力を発揮して仕事をすることを最重要視してきた。
例えば、トヨタ生産方式では、ベルトコンベアの流れが作業者の作業リズムで動いている。管理でなく自律がベースになっているのである。
新しい生産方式も、他からの強制でなく、自分達の発意と管理で導入された。
だからハードルが高くてもやらされ感がでず、スムーズに導入できたのだ。
【4】
変われる企業の共通点は、変革のリーダーシップをとる“経営マインド”を持った人物がいることだ。トヨタにはそういう管理・監督者がたくさんいる。
経営マインドとは、いつも「どうしたら勝てるか」を考えていることだ。そのために「ありたい姿」を持ち、それに向け明日の準備をしている人物のことだ。
普通のサラリーマンはリスクに対して消極的だ。仮にリスクにチャレンジするタイプの人でも、物事の判断基準は「今日の業績」レベルにとどまる事が多い。
トヨタの人間は“金太郎飴”と評されるが、それは経営者マインドを共有する 管理・監督者が金太郎飴のごとく存在するという意味でトヨタの強さなのだ。
【5】
トヨタは、トップの企業戦略とは別に、経営マインドを持つ社員たちの仲間集団が共有する「こうしたら勝てるぞ」という思いが企業を変化させている。
こうしたインフォーマルな活動をフォーマルに認知できる組織なのだ。自主的な常識はずれの改善活動が何の違和感も無く全従業員に受け入れられていく。
そして、現場で始まった変化は本社機能に影響を起こし本社そのものを変えてしまう。それは本社にも経営マインドをもつ人材がたくさんいるからだ。
トヨタ式経営を一言で言えば、全員参加のイノベーション活動であり、それを可能にするのは「変革を進める人材」と「変革に抵抗のない企業風土」なのである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●このサマリーは無料メールマガジン「立読み代行!ビジネス選書読んだフリ」の引用です。気に入ったらお申し込みください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んだ人の声が聞きたい?>次のページへどうぞ