どうやって就労状況をチェックする?
さらに問題なのは、入国したフィリピン人が養成施設で学んでいる状況、あるいは介護施設での就労状況をどうチェックするか、という体制が非常に不透明なこと。外務委員会での厚生労働省の答弁によると、フィリピン人の受け入れ機関である国際厚生事業団が年1回、フィリピン人を受け入れている施設等を巡回指導する、報告書を提出してもらう、といった方法でチェックするとのことでした。
年1回のチェック……。
聞いてがっくりしました。
チェックは行っている、というための形式的なチェックではないかと言いたくなります。しかも、現在の国際厚生事業団の人数は、わずか16人。この業務を請け負う際には人数を増やしてチェック体制を整える、ということですが、いったい何人体制で行うのかはまったく未定です。
そんなチェックで、日本人と同等以上の労働条件という規定が守れるのか。
最初に厳しいチェック体制が敷かれなければ、1回目の受け入れでは守られても、その後も守られるのかどうか、非常に心許ないと思います。
このところの景気回復で他業界の採用も活発になり、介護・福祉業界は非常に求人難に陥っています。どこの施設、事業者も人手がほしい。そういう状況下でのフィリピン人介護士受け入れです。そして今後、このフィリピンを皮切りに他国とも同じような協定署名が検討されています。雪崩のように外国人が押し寄せてきたら、介護の現場はどうなるのでしょうか。
フィリピン人は非常にホスピタリティ(もてなす心)に富んだ国民性を持つと言われています。そのホスピタリティを学ぶことは、日本人介護士にとっても大きな意義があると思います。目的が本当に人材交流であるならば、今回の協定署名は歓迎すべきことでしょう。しかし実態は……。そんなホスピタリティあふれるフィリピン人介護士を、ただ、安価な労働力としてあてにしてほしくないと思います。
ある野党議員が、こんなことを言っていました。
「日本人の介護士、看護師が足りないからと安易に外国人を受け入れたら、介護・看護業界は労働条件が向上せず、ますます若い日本人の労働力が集まらなくなり、取り返しがつかないことになる。受け入れるなら、きちんと受け入れてどう変わったのかを検証しなくてはだめだ」
本当にその通りだと思います。政府はそのあたり、まったくピンと来ていないと思います。
……と不安、不満をただ言いつのっていても仕方がないですよね。
いつもながら、一市民にできることは少ないと感じますが、せめて少しだけでも、と考え、厚生労働省に意見をメールしました。
みなさんもよかったら、ご自身の考えをメールしてみてはいかがでしょうか。
一人の声は小さくても、大勢の声になれば何かを動かせるかもしれません。
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