「内部告発」による自浄作用が企業の存続を支える


次に、大臣認定に絡む不祥事を起こした企業に「日本軽金属」「YKK AP」「東洋ゴム工業」があります。その中の「東洋ゴム工業」は断熱性パネルなどを取り扱う企業ですが、「ニチアス」同様、こちらも受験用検体の作成時に実生産では使用しない物質を大量に混入して難燃性を高める、という陰湿な手口を用いて大臣認定を不正に取得していました。

同社の社内調査によると、07年10月31日に従業員から「告白」があったことで問題が発覚したそうです。タイミングからして、ニチアスの不正発覚(10月30日)が後押ししたものと考えられます。

調査報告書では、「今回の事態発生は、特定の業種や分野の中だけで馴れ合い的に仕事を進め、建設的意見さえも排除する閉鎖的な企業風土が一部に残っていたこと。加えて、新規事業展開時の業務プロセス上の不備が原因」と総括しており、一部の従業員による愚行というより組織的な欠陥が招いた不祥事との認識を示唆しています。

実は、前出のニチアスも発覚の発端は「内部告発」でした。“良識”のある社員が勇気を奮ったことが、企業再生への原動力となったのです。しかし残念なことに、立て続けに起きた大臣認定の不正取得で、大臣認定制度の信頼は揺らいでしまいました。05年11月に発覚した耐震強度偽装事件(姉歯ショック)によって、建築確認制度が揺らいだのと同じ構図です。

「住の安全はどこへ行ったのか?」……確信のある答えは、いまだ聞けそうにありません。

「大手」=「安心」 こうした等式は“過去”のもの(?)


その他、“姉歯つながり”では耐震強度にかかわるトラブルも、今もって後を絶ちません。

今年1月29日には大証二部上場の住宅施工販売会社「ファースト住建」が、同社が施工・販売した木造2階建て住宅のうち、壁量が建築基準法で定めた基準に満たない物件を新たに529棟見つけたと発表しました。「壁量」とは、地震や強風などに対抗するのに必要となる耐力壁の量(長さ)のこと。耐震・耐久性を下支えする重要なものです。自社調査報告によると、「外注した設計事務所が行った壁量および耐震計算ミスが直接の原因。529棟中510棟は基準の70%以上の壁量を確保しており、50%未満は3棟のみ」としていますが、住宅購入者にしてみれば不安は尽きないでしょう。心情を察するに余りありません。

また、超高層マンションの「安全神話」を覆したのが、千葉県市川市に建設中の45階建てマンション「ザ・タワーズ・ウエスト・プレミアレジデンス」(総戸数573戸)で128本の鉄筋不足が判明したニュースです。ゼネコン最大手の「清水建設」を中心としたJV(企業共同体)が施工受注、「三井不動産レジデンシャル」と「野村不動産」が事業主および販売を担当しています。驚いたのは、これだけの豪華な“キャスティング”にもかかわらず、こうしたことが起きてしまう事実。そして、事態の大きさの割りに発覚の経緯や原因究明が明らかにされないあたり、目に見えない内向きな圧力がかかっているようで気がかりです。

さらに、東京都世田谷区内に建設中の高級マンション「世田谷代田レジデンス」(総戸数6戸 売主:ダイア建設)で鉄筋の配置を間違えるミス、横浜市西区の「グランドメゾン横濱紅葉坂」(総戸数99戸 売主:積水ハウス)では“再び”耐震偽装が行われました。どちらのマンションも施工主は大手ゼネコンの「竹中工務店」、後者の耐震偽装こそ黒幕は設計事務所ですが、「そんなの関係ねぇ~」というのが消費者の感想です。

信頼を獲得するには多大な時間と努力が必要です。にもかかわらず、その信頼を失うのに時間はかかりません。一瞬にして、レッテルを貼られてしまうのです。企業にとっての企業価値あるいは存在意義とは何なのか?……こうした質問を一連の騒動は突きつけているように思えてなりません。


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