自転車操業による「綱渡り経営」が自らの首を絞める(?)
なぜ、倒産に追い込まれる不動産業者が後を絶たないのか?……その理由を一言でいってしまえば、「自転車操業による綱渡り経営が原因」と考えられます。マンション分譲事業を例に、ご説明しましょう。
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(2)候補地が決定すると、売買契約を締結。地主に代金を支払う
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(3)施工業者(ゼネコン)を選定し、発注する(工事請負契約の締結)
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(4)建築確認申請・許可を受けた後、着工(マンション工事の開始)
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(5)広告宣伝を行い、マンションの販売を開始する(青田売り)
(各住戸の購入者が決まるたびに売買契約を締結、手付金を受け取る)
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(6)マンションが完成、ゼネコンより建物本体の引き渡しを受ける
と同時に、ゼネコンに建設費を支払う
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(7)各戸の契約者に住戸を引き渡し、同時に残金決済(資金回収)を行う
(注)デベロッパーによっては一部異なる部分もあります。
かなり大雑把ですが、マンション分譲業者から見た販売事業の流れは、このようになっています。ここで注目したいのは、マンション分譲業者にお金が入るのは、いつか?……「資金回収」のタイミングが重要な意味を持つことになります。順番に見ていきましょう。
支払いは「絶対条件」 しかし、受け取りは「不確定条件」
一方、分譲業者が資金回収できるタイミングは、(5)手付金の受け取り、(7)残金決済の2回。いずれも「マンションが売れたら…」という前提の上に成り立ちます。つまり、売れなければ一銭も回収できないことになります。支払いは『絶対条件』であるにもかかわらず、受け取りは『不確定条件』なわけです。このように、資金回収にリスクを伴うことが、マンション分譲業者の経営を不安定にさせます。中小業者ばかりに“しわ寄せ”が来るのは、経営基盤の安定性と無関係ではありません。
「自転車操業」と形容した意図は、次の理由によるものです。分譲業者も社員を雇用している以上、従業員を遊ばせておくわけにはいきません。次々とマンション分譲を始める必要があり、その都度、新たな事業資金が欠かせなくなります。
しかし、前述したようにマンション市況の悪化によって、資金回収は不安定。資金回収が停滞すれば、どうしても運転資金は先細ります。運転資金が先細れば、新規販売は困難。未契約住戸の営業資金もねん出しにくくなります。運転資金が回らなくなると、同時に、会社経営も首が回らなくなるのです。これが「自転車操業」と言われる所以(ゆえん)です。
もちろん、すべてのマンション分譲業者が自転車操業というわけではないでしょう。バランスシートの健全化を図り、資本増強に留意している企業も多いはずです。しかし、中には関連子会社を売却して「益出し」する分譲マンション業者も実在しています。また、大手の中には、分譲マンション事業のウエイトを縮小し、賃貸あるいはオフィス事業に経営資源を移動させている企業もあります。さまざまな事業戦略が見え隠れしているのです。
マンション不況の波は、もうしばらく続くでしょう。経営体力のない分譲業者は市場からの“退場”を余儀なくされ、業界再編が加速される気がしてなりません。
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