マーケティング/マーケティング事例

80%がNo!Windows Vistaが売れない理由(3ページ目)

Windows Vistaが発売されて1か月超。あれほど盛り上がった事前報道の割には実際の売上は盛り上がりに欠けるようです。果たしてなぜVistaは売れないのか?マーケティングの観点から鋭く分析します!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

新製品が売れるかどうかの境目とは?

キャズム理論
マニア層だけでなく、多くの一般大衆(アーリーマジョリティ)に向けて働きかけて初めて爆発的なヒットが生まれる!
お伝えしたようにイノベーター理論では新製品の購入の波は、新し物が発売されるとすぐに飛びつくイノベーターから始まって徐々にそれに続く層に波及していきます。ということは早期に新製品に飛びつく顧客層を取り込んで口コミをいかに広めてもらうかが新製品ヒットの鍵と言えます。ですから企業はイノベーターやオピニオンリーダーなど早期に新製品を購入する層に働きかけてよい評判を市場に植え付け、アーリーマジョリティの需要を喚起していく必要があります。

ところが、いくらイノベーターやオピニオンリーダーなど早期に新製品を購入する層に働きかけてよい評判を得たとしても市場を大きくすることができず、結局は撤退せざるを得ない場合もあるので注意が必要です。

たとえば、昔ビデオデッキの規格としてベータとVHSがありました。ベータは機能的に優れていてイノベータやオピニオンリーダーなどのマニア層には非常に好評でしたが、アーリーマジョリティを魅了する戦略が欠けていました。一方でVHSはハード面ではベータに劣っていたものの、ソフトという魅力あるコンテンツを武器にアーリーマジョリティに働きかけ、遂にはベータを市場から駆逐することに成功したのです。

新製品をヒットさせるにはキャズム(大きな溝)を超える必要がある!

この事例からもわかるようにイノベーターやオピニオンリーダーとアーリーマジョリティの間には簡単には越えられない大きな壁(キャズム)が存在します。この大きな壁を超えるためにイノベーターやオピニオンリーダーといった早期購入者だけでなく、合わせてアーリーマジョリティへの製品の普及活動も重要だというのがイノベーター理論を補ったキャズム理論と呼ばれるものです。

もともとヒットする製品というのは生活を便利にしたり、シンプルにしたりするものです。Windows Vistaは、確かにグラフィック面やセキュリティ面では格段の進歩が見られるようですが、生活を便利にしたり、シンプルにするという観点から考えると大半のユーザーにとっては魅力的な進歩と言い難いところがあります。逆に大容量のメモリや高いスペックのコンピューターが必要になるなど、どちらかというとイノベーターやオピニオンリーダーなどマニア層のみに訴えかける機能向上に終始しています。爆発的に売るためにはアーリーマジョリティ層にも魅力ある機能向上が必要なのですが、アンケートからもわかるように大衆層を魅了する機能向上がなかったために今回のスロースタートという結果に終わったのです。

まだ、他にもあるVistaが売れない理由と独占商品ゆえに陥った落とし穴とは?次ページへお進み下さい!
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