未体験ゾーンに連れて行く
コーアクティブ・コーチング唯一の解説書。先日、大幅改訂された第2版が出版された。 |
それはプロジェクトが失敗した最悪の状態かもしれません。もしかして、うまくいくことに対する不安かもしれません(人は失敗だけでなく、成功も恐れているものです)。とにかく、それをどうしようとかするのではなく、起きてくる感情や五感の体験をボリュームを上げるかのように思い切り経験してもらいます。部下を「未体験ゾーン」に連れて行くのです。
このようにコーチングの中であえて「経験」することで、それを受け入れ、腹が据わった状態でプロジェクトにかかわれるようになっていきます。そして、そこから尊重したい価値観が浮かび上がってきたり、自ら選択したい視点、行動が出てくることもあるでしょう。
「急がば回れ」ではありませんが、この「プロセス」の道もビジネスにおけるコーチングで重要な道です。
「答え」ではなく、「応え」を聴こう
コーチングにおいて、コーチが投げかけた質問に対して、相手がそれに「答え」たかどうか、もしくはその「答え」そのものはそんなに重要ではありません。それよりも大事なのは、質問であれ何であれ、コーチが投げかけたことに対して、相手がどう「応え」たか、そしてその「応え」です。たとえ、コーチの質問に「答え」なかったとしても、そこには何らかの「応え」があります。「答えなかった」ことそのものが、一つの「応え」でもあるのです。また、同じ「答え」でもさまざまな「応え」があります。たとえば、「このプロジェクトについて、君はどう思う?」という上司の質問に対して、「大丈夫です」という「答え」であっても、その口調、表情などはさまざまでしょう。コーチはその「応え」をしっかりと感じ取っていくことが大事なのです。
相手の「力」を引き出そうとするとき、この「応え」に注目することは欠かせませんし、「応え」に意識を向けていれば自ずと相手の「力」がどれだけ出ているかどうかを感じることができます。先ほど紹介した3つの道に関連づけていえば、次のような点を入り口に「応え」を感じ取っていきます。
■ どんな価値観が尊重されているのだろう? 尊重されていないのだろう? 価値観を尊重すればどうなっていくのだろう? (フルフィルメント)
■ 環境の犠牲者になっていないだろうか? どんな視点にはまり込んでいるのだろう? ほかにどんな視点の可能性があるだろう? 自ら選択して生きていったらどうなるのだろう? (バランス)
■ 何か避けたり、十分に体験していないものは何だろう? それと向き合って受け入れたとき、どうなっていくのだろう? (プロセス)
相手の「答え」だけでなく「応え」を聴いて、「力」を引き出していきましょう!
【参考書籍】
■『コーチング・バイブル 第2版――人と組織の本領発揮を支援する協働的コミュニケーション』(ローラ・ウィットワース他著 CTIジャパン訳 東洋経済新報社)
【関連サイト】
■CTIジャパン(コーアクティブ・コーチ養成機関)
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