“合理的”で愚かな組織を救う「命令違反」

太平洋戦争を事例に、最新の経済理論を使って組織の不条理を解き明かす

”合理的”で”賢い”人間が愚かな行動を起こしてしまうのはなぜでしょう? それは、「人間の情報認識能力は限定されており、人間はそこで得た不完全な情報の中でのみ合理的に行動する」という「限定合理的」な存在であるからと、菊澤研宗・慶応義塾大学商学部教授は説明します。(『「命令違反」が組織を伸ばす』菊澤研宗著 光文社より)

つまり、人間はすべての情報を完璧に知る存在でないために、”合理的”に、社会全体の利益や長期的な組織の利益を捨てて、短期的な個人の利益や組織の利益を優先するという”バカ”な行動を取ってしまうというわけです。

そこで”合理的”であるけれども”不条理”な状態を回避するためのファイナル・ソリューション(最終解決)として、菊澤教授が導き出した答えが「命令違反」です。

経営者であれ、上司であれ、指示や命令をするのは、「限定合理的」な存在です。従って、その指示・命令が社会的利益に反したり、長期的な組織の利益を損なうかもしれないことは十分考えられます。だからこそ、部下は上司の指示・命令に従うよりも、自らの判断に従って「命令違反」することで、愚かな行動から抜け出せるかもしれないということなのです。

実際、部下などの現場に近い人間のほうが、組織としての利益だけではなく、社会の利益を考えるための情報を得やすい状況にいるでしょう。組織を維持するためには許されないはずの彼らの「命令違反」が、実は組織を救う可能性もあるのです。

愚かさを認めることで愚かな行動から抜け出そう!

もちろん、「命令違反」は組織の人間関係を崩壊させたり、組織としてのまとまり・強さをなくす可能性があります。

また、経営者や上司と同様、部下も「限定合理的」な存在であり、その判断が社会的利益に反したり、長期的な組織の利益を損なうこともあるでしょう。現場に近いがゆえに、短期的な視野にとらわれる危険性もあります。つまり、何でもいいから「命令違反」をすればよいというものではないのです。

まず必要なのは、自分自身も含めてすべての人間が「限定合理的」である、つまり”合理的”に愚かであると認めることです。いくらがんばって努力したところで、誰も最終的に完全な知識を獲得したり、完璧な存在になることはできないのです。

愚かな行動から抜け出すためには、お互いがそれぞれの考えの、すべてを否定するでも肯定するでもなく、批判的に絶えず議論を続けて行動していくことが必要になります。そこには「命令違反」も当然含まれてくるでしょう。また、組織の外部に対してもオープンになり、積極的に意見を聴いていくことも重要です。

こういった批判的議論を可能にするために、菊澤教授は次のような人間関係が必要だと主張しています。

「それは、自分の目的を達成するために相手を単なる手段として、あるいは単なる物として利用してはならないという人間関係、つまり一人ひとりが常に相手を一つの目的、すなわち価値をもつ存在であるとみなし、決して相手を自分の目的達成のための手段として扱わないという人間関係である」(『「命令違反」が組織を伸ばす』)

上司も部下も自分自身もみんなが愚かであることを認めると同時に、誰もがかけがえのない”人”であることを認めて、愚かな会社・組織から抜け出しましょう!


【参考書籍】
(■『「命令違反」が組織を伸ばす』(菊澤研宗著  光文社)
■『なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか』(菊澤研宗著 扶桑社)

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