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田坂広志さんのマネージャー論1(3ページ目)

「人生の成功とは何か?」「なぜ我々は働くのか?」このような根源的な質問を問い続けている田坂広志さんに、今のマネジメントで起きていること、そしてマネジャーに対するメッセージをインタビューしました。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

仕事は何かの手段ではない


田坂:「働く」ということは、本来「喜び」です。そのことに、我々は気がつくべきでしょう。特に、日本という国においては、「働く」という言葉は、「傍」(はた)が「楽」(らく)になるという意味とされている。すなわち、この国においては、「働く」とは、周りの人々を楽にすること、さらには、世の中の人々を幸せにすることを意味している。だから我々は、「傍」を「楽」にできたとき、「働く喜び」や「働き甲斐」を感じることができるのです。その意味で、「働く」ということは、本来、賃金を得たり、利益を上げるための「手段」ではないのです。「働く」ことそのものが「喜び」であり、その「働く喜び」や「働き甲斐」そのものが素晴らしい報酬なのです。働く人々にとって、仕事の時間は人生のかけがえのない時間であり、それは、ただ何かの「手段」であってはならないのです。

―― そうはいっても、やはり利益が出ないと会社が倒産してしまいますよね。

田坂:そうです。先ほど申し上げたように、社員が「働く喜び」や「働き甲斐」を感じることのできる企業を維持し、発展させるために、「利益」というものは非常に大切です。しかしそれは、あくまでも会社を存続させるための「手段」にすぎません。
そして、「利益」には、もう一つ大切な意味があります。それは、社会に貢献したことの「証」なのです。そもそも、企業とは、事業を通じて社会に貢献する存在です。そうであるかぎり、その企業が適正・公正な事業を通じて大きな利益を上げたということは、それだけ社会に貢献したことの証明でもあるのです。いま、株主資本主義の限界が指摘されるなかで、「企業の社会的責任」(CSR)や「企業の社会貢献」、「社会起業家」といった思想が、大きな注目を集め始めています。これらの思想は、企業や利益というものを、さらに深い視点から見つめた思想に他なりません。

―― こんな時代の中で、現場のマネジャーは、どうすればよいのでしょう? 田坂さんは、どんなメッセージを彼ら・彼女らに伝えたいですか? (第二回に続く)


第一回は、いかがだったでしょうか? 現代のマネジメントに潜む「操作主義」。そして、収益という「目的」のために、仕事や人間が「手段」となっていることの問題点。自分自身の日頃のマネジメントを振り返って、「ドキッ」とされたかもしれません。それでは、こうした状況の中で、現場のマネジャーはどうすればよいのでしょうか?
次回は、より深く「働く」ことの意味を掘り下げながら、マネジャーが歩むべき道についての話に移っていきます。お楽しみに!

【関連サイト】
■田坂広志さんのサイト「未来からの風」
■「相手を“モノ扱い”していませんか? 繁忙期に食らいがちなしっぺ返し」
■「「上司の悩み」解決シリーズ 4 部下が動きません」
■「部下を“モノ”扱いする本は避けましょう! コーチング本を選ぶ3つの視点」
■「コーチングの基本を知ろう! 5 部下は輝くスター(星)なんです」
■「部下の目標を明確にし、やる気にする」
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