コーチング/目標達成・プロジェクト進行

MBO面談のコツ!「目標による管理」で部下自身が力を発揮する

「目標管理」は、MBO面談などを通し、多くの企業で普及が進んでいる考え方です。しかし、本来の「目標による管理」ではなく、旧来のノルマの延長の「目標の管理」になっている場合も。部下が力を発揮する「目標による管理」への2つのコツをご紹介します。

宇都出 雅巳

執筆者:宇都出 雅巳

コーチング・マネジメントガイド

MBO面談の真意とは?

MBO面談の真意とは?

多くの企業で普及が進む「目標管理制度」。しかし、本来の意味である「目標による管理」ではなく、旧来のノルマ管理の延長の「目標の管理」にとどまっているのが現状です。「目標による管理」に移行し、部下が100%の力を発揮するための2つのコツをご紹介します。
   

MBO面談にて、「目標管理」の意味を履き違えていませんか?

年功序列から成果主義への流れの中で、導入が進んできた「目標管理制度」。あなたの企業でも、四半期や半期、年度ごとに部下と上司が面談時間を持って、目標を設定したり、目標の進捗状況を確認することが行われているかもしれません。

さて、それでは、目標管理制度がどれぐらい機能していますか? もしかして次のような面談に行っていないでしょうか?

上司:「今年度の目標の達成状況だけど、どうだ? 半年前に設定した目標管理シートを見てみると……」
部下:「売上目標はほぼ達成できると思いますが、新規開拓件数は目標の半分になりそうです。」
上司:「まあそれは仕方がないとして、売上げはもう一踏ん張りして、さらに上を目指してよ。ところで、来年度の目標だけれど、これぐらいで(目標数字を指差しながら)どうだろう?」
部下:「はあ……。なんとかがんばってみたいと思いますが、競争も激しくなっていますし。」
上司:「そこをなんとかがんばってくれよ。君ももう5年目なんだから。そろそろチーム全体のことを考えてもらわないと」
部下:「わかりました。がんばってみます。」

さて、いかがでしょう? あなたの面談がこんなふうになっているとしたら、目標管理はうまく機能しているとはいえません。なぜなら、「目標による管理」ではなく、「目標を管理」しているからです。
 

MBOの意味を解説! 目標管理とは「目標による管理」のこと

「目標管理制度」。これはアメリカから入ってきた考え方で、「MBO」と略されることもありますが、もともとは「Management by Objective」、つまり「目標による管理」という意味です。そして、管理するのは誰だと思いますか? 

上司ではありません。部下なのです。

目標管理とは、本来、部下が自分の仕事を目標を使って自己統制することなのです。上司が部下の目標をノルマとして締め付けることではありません。目標管理における上司の役割は、部下が自己統制するために役立つ目標設定や、その自己統制をサポートすることなのです。

おそらく多くの上司は、これまでは自らが「目標を管理」していたことに気づいたでしょう。そして、部下が「目標による管理」をできるようにサポートするといっても、どうしていいのか見当もつかないのではないでしょうか?

それでは、そんなあなたに、本来の目標管理、「目標による管理」を実現するための2つのコツをお伝えしましょう。
 

MBO面談では「目標」ではなく「部下」に焦点を当てる

部下に焦点を当て続けましょう!
真の目標管理を実現するための究極のコツとは何でしょう?

それはあなたが部下に面談するとき、意識の焦点を「目標」という事柄ではなく、「部下」という人に当てることです。

もう少し具体的に言うと、「今期の目標は……」「来期の目標は……」というように、「目標」を主語にして話すのではなく、「○○さんは……」「お前は(君は)……」といったように「部下」を主語にした会話を行うのです。

もちろん、「目標」は大事ですから話の中心になるのは変わりません。しかし、その目標を上司であるあなたが直接焦点を当てるのではなく、部下に焦点を当てながら部下自身が目標に焦点を当てるように促すわけです。

「今期の目標について、○○さんはどう思うのか?」
「来期の目標について、君はどうしたいのか?」

といったように、あくまでも部下に焦点を当てて質問を行いながら、部下自身が目標を設定するように支援していきましょう。

ときには、上司である自分自身の目標に対する考えを伝える必要があるでしょう。そのときも、「私は......と思う」と伝えたうえで、「○○さんはどう思う?」と部下が自らの考えを明確にできるように質問していきましょう。

「目標」から「部下」へ。これだけの意識の向け方の違いで、あなたの目標管理面談は大きく変わり、「目標による管理」に大きく一歩近づきます。
 

目標は結果・行動・部下自身の3点を押さえよう

さらに部下が目標によって自らの仕事を管理しやすいように、目標自体についてのコツもお伝えしましょう。

それは、目標に売上げ・利益などの結果として得られる「結果目標」だけでなく、部下自身が直接コントロールしたり影響を及ぼすことができる目標、つまり「行動目標」も設定することです。たとえば、セールスであれば訪問件数、電話コール数などです。これによって、目標は部下にとってより身近なものになっていきます。

そしてさらに、行動目標に加えて、部下自身がどうなるかという目標、「自分目標」も設定しましょう。年度末には部下がどんな自分になっているのか? それは能力的なものかもしれませんし、人格面にかかわることかもしれません。部下自身の成長目標として「自分目標」を設定することで、目標と部下自身のつながりはさらに強いものになるでしょう。

このように、目に見える結果だけでなく、行動、さらには部下自身の目標を定めることで、結果が達成される可能性も高まります。なぜなら、結果をもたらすのは行動であり、行動を起こすのは部下という人だからです。

もちろん、「結果目標」、「行動目標」、「自分目標」はお互いそれぞれ整合性や関連を取っていくことが重要です。次のような質問を投げかけることが効果的です。

■「結果目標」を達成するためにはどんな行動が必要でしょう? 
■部下がやってみたい行動はどんな結果をもたらす可能性があるでしょう?
■今年度末にはどんな自分になっていたいでしょう? そんな自分ならどんな行動を行い、どんな結果を生み出しているでしょう?
■「結果目標」を達成している自分はどんな自分でしょう? 
■「行動目標」を達成している自分はどんな自分でしょう?

こんな問いを部下に投げかけながら、部下に3つの目標の整合性、関連性を確認してもらいましょう。

価値を生み出す源泉は「人」である部下です。部下が100%の力を発揮するために、ご紹介した二つのコツを活用して「目標の管理」から「目標による管理」にシフトしていきましょう!

【参考書籍】
■『絶妙な「聞き方」の技術』(宇都出雅巳著 明日香出版社)

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