コース料理から御紹介
今回はディナーコース(10,000円)から料理を御紹介します。
冷菜2種から。
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大地と海の恵みによる多層的な味わい。 |
まず一品目は「
ホワイトアスパラのビアンコマンジャーレ 生うにとコンソメのジュレ」。ジュレはとても澄んだ薄い琥珀系の黄金色の色調で、底にビアンコマンジャーレ、その間に生雲丹が盛られており、それら三色の鮮やかさが印象的な一品。
口に入れると、ほんわかとジュレに閉じ込められたコンソメ香が鼻腔に届き、続いて生雲丹の濃厚な磯風味、そこにホワイトアスパラを凝縮したビアンコマンジャーレが合わさり、ねっとりとした舌触りと共に、生雲丹を内包したジュレ爆弾が口いっぱいに拡がる! ジュレ好きにはたまらないヘルシーで軽やかな一品です。
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京都ならではのテロワールが美味しい京野菜を生み出す。 |
続いては、「
赤座海老と2色のかぶのサラダ 冷たいかぶら蒸し風」冬野菜の代名詞でもある「かぶら」を、大胆にも冷製の「かぶら蒸し」として表現した逸品。「赤座海老」が持つプリップリの食感と、二色の「かぶ」が持つシャッキリとした食感、それに上からたっぷりとかけられた「かぶら」のとろみ具合が渾然一体となり、野菜料理というよりも果物料理のような甘い味わいの逸品となっていました。
キャビアも見た目の色合いだけではなく、ちゃんと味のアクセントになっているのも、さすが! 朝日が昇る頃には、まだ大地の中に根を張っていたであろう鮮度の良い「蕪」の瑞々しさ、そして京都の寒さが育てた蕪の甘味分子が、舌の上で弾け飛ぶように主張します。
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菊菜香が白子の豊満な風味と実に良く合う。 |
冷菜2皿の後は、「
白子の炭焼き 菊菜のスープ」が登場。これは河豚の白子を、スープ仕立てにした一品で、白子の軽く焦げた部分の苦みを、菊菜のスープが優しく中和し、絶妙な調和を醸し出します。白子のとろける旨さに、菊菜スープの香りを混ぜ合わせて食べてみると、野菜を食べているような、スープを飲んでいるような初体験の味わいと舌触り。河豚の白子と菊菜という一見すると意外な組み合わせのようですが、食べてみると驚くぐらいサッパリとした相性の良さを見せつけてくれました。
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こういった料理には是非、糖分が濃く、華やかな香りのヴィオニエ品種の白ワインを合わせたいですね。 |
パスタ一皿目は冷パスタで、「
いちごの冷製カッペリーニ 25年物のバルサミコで」。「いちご」の頬を染める少女のようなフレッシュ感。そして酸味の効いた「トマト」の風味。それはまるで無垢で爽やかな色香すら感じさせるほど。そして、そこに「25年物のバルサミコ」の熟成された大人の薫香が姿を現し、「カラスミ」と「ドライトマト」の粉末から漂うスパイシーさ、それらが極細パスタと絡み合い、舌と脳を虜にするかのごとく、華やかに駆けめぐります。
続く、温パスタは「
松葉ガニのカルボナーラ」。これは単なる蟹のパスタではなく、たっぷりの身と、松葉蟹の濃厚な「蟹ミソ」をカルボナーラに取り入れ、そこに甘く歯応えのあるレタスを合わせるという、まさに大地と海のマリアージュともいうべき一皿! レタスの持つ土のミネラルと、蟹(ミソ)のミネラルが、口の中で弾むように主張し合い、咀嚼が終わる頃には、ひたすら口福感の余韻に包まれました。本当に美味しいパスタを食べる幸せを改めて教えてもらったような気がします。
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椎茸と肝ソースの相性も良好。まるで和食のような一皿です。 |
パスタの後は魚料理で、「
黒あわびの蒸し焼き」。艶やかな「黒あわび」の色合い、そして心地良い弾力のある食感を、カレー風味のスパイスで仕立てた黒あわびの「肝ソース」が、一層味わいを際立たせています。「生椎茸」との相性も秀逸で、海の大地の恵みを堪能できる贅沢な一皿。
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運ばれてきた瞬間に、トリュフの官能薫が香り立つ。 |
最後は肉料理の「
牛ヒレ肉と春野菜のソテー 黒トリュフ添え」。ジューシーで旨味の凝縮した栃木県産の和牛ヒレ肉が、トリュフに包まれての登場! もうこれは、食べる以前に美味しいと決まっている方程式のような組み合わせです。トリュフの豊満でエレガント、そして官能的すぎる薫香が、肉に絡み合って、お互いを引き立て合います。
しかし驚くべきは、このハイレベルな肉の旨味と、トリュフの官能香に負けない「芽キャベツ」の存在感! これだけの高級食材と並んでも、まったく違和感のない「凛」とした存在感の強さは、美味しいというより「凄い」の一言。「芽キャベツ」の甘さとシャキシャキした食感が、噛む毎に「春」の訪れを早々に感じさせてくれるかのようです。