お花見を楽しむために知っておこう! 桜の豆知識・雑学
桜の開花に胸躍る日本。なぜ日本ではお花見をするのでしょう? お花見の由来、桜の種類や見分け方、染井吉野(ソメイヨシノ)のプロフィールなど、お花見を楽しむための豆知識・雑学をお届けします。<目次>
桜の豆知識・雑学:お花見の由来
春になれば桜、桃、菜の花など色々な花が咲き誇り、見どころがいっぱいあります。それなのに、花見といえば桜の花見をさすのはなぜでしょう? それは、平安時代より桜が花の代名詞になっているからです(奈良時代は、花といえば梅や萩をさしていました)。平安の貴族は桜の花に心を躍らせ、桜を愛でては歌を詠み、宴を開いて楽しむようになりました。また、農民にとって花見は豊作祈願の行事でした。古来、田の神様は冬になると山へ行き、春になると里へおりると考えられていました。「桜」の「さ」は早苗、早乙女、皐月などと同じように稲や田の神様をさし、「くら」は神様の座る場所という意味で(※この他にも、「咲く」に複数の意の「ら」をつけたもの、咲くの古語「栄ゆ」の転じたもの、などの説がある)、春になっておりてきた田の神様が宿る木とされていたため、桜のもとで田の神様を迎えてもてなし、桜の咲き方でその年の収穫を占ったり、桜の開花期に種もみをまく準備をしたりしていました。
やがて、江戸時代になると、春の行楽として花見が庶民の間にも広がり、酒を酌み交わす花見になっていきました。三代将軍家光が上野に桜を植え、八代将軍吉宗が隅田河畔や飛鳥山を桜の名所にし、花見の場も増えました。園芸が盛んなこの時代に品種改良が進んだことで、身近な場所で花見が楽しめるようになったのです。
桜の豆知識・雑学:桜の種類や見分け方
お花見は、いにしえから続く春のレジャー。桜の基礎知識を仕入れて、もっと楽しんでみませんか。 桜は約10種類の原種をもとに、それらの交配種で100種以上が野生化し(このような野生種、自生種を「山桜」といいます)、さらに人の手で栽培されたものが300種以上もあります(このような栽培品種、園芸品種を「里桜」といいます)。また、「八重桜」は里桜の八重咲きの品種の総称です。代表的な桜の種類・見分け方
山桜(ヤマザクラ)
花と葉が同時に開く。古くから山に自生しており、昔のお花見は山桜だった。吉野山(奈良県)の山桜が有名。大山桜(オオヤマザクラ)
花と葉が同時に開く。花が大きく紅紫色なので、紅山桜とも呼ばれる。また、寒さに強く北海道に多いので、蝦夷山桜ともいう。大島桜(オオシマザクラ)
花と葉が同時に開く。伊豆地方に自生しており、花が大きく香りもよい。丈夫で成長が早いので、染井吉野など多くの里桜の母種になっている。桜餅を包む葉は、大島桜の葉を塩漬けにしたもの。霞桜(カスミザクラ)
花と葉が同時に開く。白っぽい色をしているので霞がかかったようだとその名がついた。江戸彼岸桜(エドヒガンザクラ)
花が咲いた後、葉が出る。お彼岸の頃に開花するのでその名がつき、枝が長く垂れる「枝垂れ桜」は江戸彼岸桜の園芸品種。とても丈夫で長寿なので各地に巨木や名木があり、日本三大桜も江戸彼岸桜の系統。【日本三大桜】※いずれも国の天然記念物
- 山高 神代桜(やまたか じんだいざくら)……山梨県北巨摩郡武川村。樹齢2000年以上
- 根尾谷 淡墨桜(ねおだに うすずみざくら)……岐阜県本巣市。樹齢1500年以上
- 三春 滝桜(みはる たきざくら)……福島県田村郡三春町。樹齢1000年以上
豆桜(マメザクラ)
花が咲いた後、葉が出る。花が小さく、挿し木でも育つので盆栽としても人気。緋寒桜(ヒカンザクラ)
花が咲いた後、葉が出る。早春の寒い頃から開花し、濃いピンク色をしている。釣鐘のように垂れ下がって咲き、花びらがくっついたまま落花する。彼岸桜(ヒガンザクラ)と間違えやすいため、寒緋桜(カンヒザクラ)と呼ばれることも多い。河津桜(カワヅザクラ)
花が咲いた後、葉が出る。大島桜と緋寒桜の自然交配種で、静岡県河津町で発見されたことに由来。1月下旬から咲き出し、およそ1か月咲いているため、話題になることが多い。染井吉野(ソメイヨシノ)のプロフィール
江戸時代末期に、染井村(現在の豊島区駒込)の植木屋が、大島桜と江戸彼岸桜を交配して作りだしたもので、当初は桜で名高い奈良県吉野にあやかり「吉野桜」という名でしたが、吉野山の山桜と間違えやすいため「染井吉野」と改名されました。この新品種が国民的人気を得たのは、大島桜の華やかさを、花が咲いたあとに葉が出てくる江戸彼岸桜の特徴が引き立ててくれたためで、父母の利点を上手く受け継ぐ逸品だったのです。
さらに、十年ほどで立派な木に成長するため、明治時代に全国の学校、公園、沿道、河川沿いなどに次々と植えられ、主流となっていきました。現在、日本の桜のおよそ8割は染井吉野で、最もポピュラーな桜でしょう。 ただし、染井吉野は観賞用として交配したため、自力で繁殖することができません。全国にある染井吉野は、一本の原木から接ぎ木や挿し木で増やした、いわば“クローン”。そのため同じ条件のもとで一斉に咲き出し、お花見や観測に適しているわけですが、近い将来寿命を迎えてしまうので、その対応が課題になっています。
華やかに咲き、散りゆく様も美しいものですが、花の見ごろは「花七日」と言われるほど短いものです。今年はどこでどんな桜と、どんなふうに出会うのか……お花見が楽しみですね。
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