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スコッチと樽熟成の裏話3

今回は通称スパニッシュオークで知られるコモンオークとシェリー樽についての話を中心にした。よくシェリー樽熟成というが、ではそのシェリー樽の材っていったい何だろう。実は主流はコモンオークじゃないんだよね。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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大西洋を渡ったホワイトオーク

前回、シェリー樽についてわずかに触れた。今回はウイスキーのモルト原酒熟成に使われるシェリー樽とはどんなものか、簡単に説明する。

シェリーといえばスペイン。スペインといえばコモンオーク(通称スパニッシュオーク)だが、実はシェリーの熟成に使われている樽材の多くは北米産のホワイトオークである。
シェリー酒の歴史を語るだけでも興味深いものがあるが、ここでは何故スペインでホワイトオークなのか、を説明する。

樽
樽材の違いで、熟成による香味は大きく 異なる。写真/川田雅宏
その歴史は、新大陸発見からはじまる。発見されてから後、新大陸へはヨーロッパの物資がたくさん運ばれていく。ただその復路、ヨーロッパに持ち帰る荷がない。名産、製品といったものがまだなかったからだ。
空のままだと喫水線が高すぎて船が転覆してしまう。ならばと錘(おもり)の代わりとして重宝がられたのがホワイトオークだった。伐採して積載して帰国したのだ。

それに目をつけたのがシェリー商たち。ホワイトオークの材質の良さを見抜いたのだった。コモンオークはホワイトオークよりポリフェノールやタンニンが多く溶出するという特長があるが、加工しづらく漏れが多い。樹の道管の詰まり(チローズという充填物)具合はホワイトオークが最も緻密で、樽にした場合漏れが少ない。

シングルモルトとコモンオーク

19世紀はじめには、シェリー商たちの間ではかなりのホワイトオーク材が備蓄され、すでに主流となっていたようだ。それがいまにつづいており、一般にシェリー樽というとホワイトオークでつくった材であることが多い。

ところが、コモンオークの良さに着目しているところもある。スコットランドではマッカラン蒸溜所、アイルランドではミドルトン蒸溜所、日本ではサントリーがよく知られている。
これは漏れるから悪い、という容器としての捉え方ではなく、その材質による熟成効果に期待したものだ。

コモンオークからつくられた樽で熟成させたモルト原酒は、独特の赤褐色となり、熟した果実、ドライフルーツ、チョコレートを想わせる濃厚なフレーバーを生む。
マッカランではスペインの現地で1年間シェリーの発酵に使った後に、2年間シェリーの熟成に用いた樽を使用。サントリーはスペインの現地でドライ・オロロソ・シェリーを3年間熟成後の樽を引き取る仕組みをつくりあげている。

ではこれで今回はおしまい。またいずれ樽の話をすることもあるだろう。
前回の『スコッチと樽熟成の裏話2』も是非ご一読願いたい。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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