サロンで食べる名古屋コーチン
西麻布は学生の頃、よく飲み歩いた町だ。30年近く前のことになる。当時はまだ霞町の呼び名のほうがメジャーだった。いつ頃からかあの交差点を西麻布交差点と呼ぶようになったのだろうか。いまでもJRを国鉄と言ったり、国電と言ったりすることがあるが、タクシーに乗って、つい「霞町交差点まで」と告げてしまう。ベテラン運転手さんにしか通じない。
『TORI+SALON韻』。素直に「トリサロン・イン」と読めばいい。名古屋コーチンをすこぶるつきのおいしさで食べさせてくれるこの店は、私にとって懐かしい霞町、いや西麻布交差点の近くにある。
上/カウンターごしに焼場が見えるモダンな店内。下/匠の技を披露するオーナー料理長の 中山一夫氏。 |
六本木通りからやや中に入り込むように建つモダンなビルの階段を上がった2階。店内は鶏料理専門店に共通するイメージ、古民家風のつくりのものは一切ない。店名に冠した通りのサロン。嫌味のない、すっきり、ゆったりとした空間が広がっている。
これが西麻布ってもんだろう、と思う。鶏料理をいただきながらブルースなんか聞こえてくれば最高だな、でもタンゴとかクラシックの交響曲なんてのも面白いかもしれない。
そんなイメージが勝手にふくらむ店内だ。
皮面パリパリのタタキは極上
さて鶏料理だが、こちらの店でウイスキーとの相性の良さを再認識した。ウイスキーと相性が良い料理とはどんなものか。大雑把にいえば、ウイスキーは大麦をはじめとした穀類からつくられているから、穀類を用いた料理とは一般的に相性が良い。次に製麦工程で麦芽を燻すことが多いから、香ばしい風味の料理、燻製、焼き物、乾き物、炒め物との相性度が高い。
そんでもって飲み方だが、濃厚な料理にはストレート、オン・ザ・ロックス。淡泊な料理には水割り、お湯割りなど。スパイシーな料理にはハイボール、オン・ザ・ロックスなどがおすすめだ。
オーナー料理長、中山一夫氏におまかせで色々と食してみたのだが、鶏料理って、ハイボールと素敵に合うんだな。とくに香ばしく焼き上がったモモ肉のタタキはたまらない。
中山氏の焼き方が凄いんだと思う。皮面パリパリで、肉はジュワっと滋味が凝縮されている。匠の技なんだな。
これをシングルモルトの山崎12年、ハイボール(1,200円)とともにいただく。至福、至福、至福と3回も書いちゃうほど美味しい時なんだな。次ページでは、料理のことをもう少し詳しく伝える。(次ページへつづく)