ラベルには美学がある
バーカウンターでウイスキーボトルのラベルを見るのが好きな人もいるだろう。私はまさにそのひとりで、バーテンダーの背後に鎮座したボトル群を飽きもせず眺めていることがある。ラフロイグ15年のラベル。シンプルで極めてインパクトが強い。 |
またラフロイグをひと口含めば、このラベルを忘れることはない。薬品のようなフェノール香、塩っぽく海草をイメージさせるオイリーな味わい。強烈な香味とともにシンプルなラベルデザインが、このウイスキーの記憶を飲み手に鮮やかに刻み込む。
ウイスキーらしい紋章
もうひとつ。よくわかっているのに、確認するかのようにいつもじっとみつめてしまうボトルがある。ブレンデッドウイスキーのバランタイン。何を確認するかというと、紋章である。バランタインのラベルの紋章。ウイスキー製造を象徴的に表している。 |
盾の両脇には白馬が、青地に白の斜め十字、スコットランドの旗、セントアンドリュース旗を捧げている。
この紋章、メーカーが勝手につくってラベルに描いたものではない。イギリスは紋章の国だ。紋章院の許可がなければ使用できないし、使用資格も厳しい。紋章を持っていることは誇りであり、ステイタスシンボルでもある。
ただそのデザインの中に、ウイスキー製造をここまで象徴的にあしらったものは稀だ。だから気がついてみるとバランタインのラベルをじっと見つめたまま、その17年を飲んでいることがよくある。なんだか引きつけられてしまう。
では次ページではもっと面白いラベルの話をしよう(次ページへつづく)