波長の合うバーを見つけよう
オーセンティックという言葉がよく使われるが、何をもってそういうのかはわからない。どんな素敵なつくりをしていても、バーという空間はただの酒庫にすぎない。いいバーとは、カウンターの中に立つ人間と、その前でグラスを傾ける人間との波長が合致するかどうかで決まる。だからいいバーとは、それぞれの人間の胸の内にある。私がいくらいい店だと言っても、そうかなと首を傾げる人がいるのは当然のこと。
波長の合うバーを見つけるといい。そしてそこへひと晩に二回行く。これが粋だ。 |
まあとにかくだ、波長の合う店を見つけなさい。で、そのバーをひと晩に二度使いなさい。これがほんとうのお洒落さん。
たとえばだ、仕事が終わって誰かと待ち合わせをする。その時にウイスキー&ソーダ、つまりハイボールを飲む。これで一日のスイッチを入れ替える。誰かさんが来たら、一、二杯で切り上げて、スッと店を出る。どっかで食事を終えたら、またそのバーに戻って行く。
これは店側にとっては嬉しいものだ。そして食後にふさわしいカクテルを一杯。次にウイスキーの森へと入り込む。
ごくたまにでいいから、こういう習慣を身につけるといい。粋だよ。
他者といながらにして、ひとり
食後にどんなカクテルがいいかは、「バーで飲む食前、食後酒」を読んでいただきたいのだが、実はバーカウンターは森になりやすい。あの横並びがいいんだな。これに関しては、「女性のためにバーの真の効用を教えよう」で述べたのだが、他者といながらにして自己を見つめられる。いい時間を生む。横にいる相手と時折会話しながら前を見つめる。これがいいんだよ。そしてウイスキーの森にたたずむんだ。
ついこの間まで私はひどい酒飲みだった。ひと晩に8軒ぐらいのバーへ行くこともしばしば。なんと8軒目が最初の夜の幕開けをしたバーだったりして、夕方との私の違いに嫌がられたものだ。まったくもってバカチン。
こういう飲み方をしてはいけない。ちっとも粋じゃない。
いまはもう体力がなくてそんな飲み方はできない。3軒も行くと眠くなる。だから2軒目でウイスキーの森で遊ぶ。そしていい酔い心地で帰る。やっと大人の飲み方ができるようになった。