アイラモルトの香味が潜む肉
新橋にある鉄板焼『円居』(まどい)で食べたハンバーグはなんとも秀逸だった。知力とセンスにあふれる肉料理といえる。“黒毛和牛サーロインのクルビネット アイラ風ボウモアソース”(¥1,800)という品がそれだ。アイラモルト、ボウモア12年の香味がタネにもソースにも生かされている。だからといってボウモア漬け的な嫌味な感覚は一切ない。美しく仕上げられて皿に鎮座した肉塊には、よく知っているハンバーグとは異なる品格とそこはかとない芳しさがある。まったくもって大人の色香が漂っている。
上/厳選素材が香ばしく焼けるのを目の前で愉しめるカウンター席。下/黒毛和牛サーロインのクルビネット アイラ風ボウモアソース(¥1,800) |
肉は極上の国産黒毛和牛のサーロイン。それゆえに焼き加減はレア。あみ油で肉をコーティングするから肉汁は中に封じ込められ、ジューシーさがたっぷりとある。そこにはもちろんボウモアの樽香も潜んでいる。
またボウモアのワインに似たしなやかなタンニンの風味も溶け込んでいる。
ソテーする時にはぺルノを少々加え、より大人の味へと高めていく。ソースはボウモアにフォンドボー、バター。もうこれ以上の説明は必要ない。とにかく口にしてみるしかない。
極上の肉にボウモア三昧
肉が極上のせいもあるが、なんとも口溶けのいいハンバーグだ。味わいながら、「おいスコットランドの人々よ、あなたたちはこんなに旨い肉料理に出会うことはないだろう」と心の中で呟いた。日本人でよかったと実感する。口中でふんわりとハンバーグに潜む樽香を感じながらボウモア12年(¥1,000)を飲む。ハイボール、水割り、ロックと試す。なんと贅沢な味わい方なんだ、と我ながらあきれてしまう。普段はロックで味わうことはないんだが、3杯の中ではウイスキーの冷え加減と濃さがハンバーグと溶け合うような気がした。
ただ人間というのはより贅沢になる。同じボウモアでも17年のストレートとともに食べてみたいと思うのだ。どんなもんだろうな。
では次ページでは、ボウモア12年とともに愉しんだ鉄板焼フルーツの味わいを教えよう。これも食べてみなくちゃ損だよ。(次ページへつづく)