ハイボールなママがいた
14オンスはあるだろうか。大ぶりのグラスの表面は細かな霧がフィルターとなり、中ではぎっしりと詰められた氷とゴールデンブラウンの液体がうっすらと輝いている。上/開店同時に常連客が肩を並べるカウンター。下/たっぷりの氷が嬉しいハイボール |
申し訳ないのだが、私はここ何年も白角を飲んではいない。5年以上は遠ざかっている。スタンダードの角瓶はよく飲んでいるのだが、白角はどんな味だったけかな思い出せないでいた。
「私のウイスキーは、山崎12年からはじまったんです。でも毎晩山崎のソーダ割りを飲むっていうのは贅沢ですからね。それでいろいろ試して白角に落ち着いた。お店では自分のいちばん好きなウイスキーをお客さまにおすすめしているんです」
そう語る福井綾子ママに乗せられて白角ハイボール(¥490)をグビッと飲む。おっ旨い。角瓶のハイボールは独特の甘味があるが、白角はすっきりとしたやや辛のキレ味がある。クーッと口中をキレのいいシュワシュワ感が駆け抜ける。
ママはこの感覚が好きなんだろうな、と実感する。
とてもチャーミングなママである。中学生や高校生の時、クラスにいたような気にさせる女性だ。ショートカットがよく似合い、人懐っこい笑顔を絶やさない元気な娘。どこかいつも弾んでいるような娘。まさにハイボールのような女性だ。
あちゃ、私は惚れちゃったんだな。ハイボールひと口で酔うはずないもんな。
名物秘伝の手羽唐
店は『手羽唐一歩。』。てばからいっぽ、と読む。日本橋浜町にある、明治座がすぐそば。名物は秘伝の手羽唐(¥480)だ。この手羽はとてもスパイシー。写真は2人前で量がたくさんありそうだと思われるかもしれないが、こんなのはひとりでたちまちにして食べつくす。
ハイボールを左手に、右手には手羽唐。しばらく両手がふさがった状態がつづく。ジューシーでスパイシーだから止まんない。
「あのね、ハイボールとの組み合わせは女性の方が多いんですよね。女性のお客様のほうがね好奇心が強いから、じゃあ試してみようかとすんなりといく」
ママにすすめられて、そうかとすんなりいかない男がいるのか。ウーン。まあそういう男は他の酒をグダグダくっちゃべりながら飲んでいるんだろうな。いいけどさ、勝手だから。自由なんだから。
でもさ、手羽唐と白角ハイボールをやってみなよ。いいよ。旨いよ。
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