カウンターで並んで座ることは、同じ空間を共有しつつもひとりでいる状態。これが深い心の会話がしやすい環境だという |
要約すると、テーブル席で向かい合うのと、カウンター席で同じ方向を向き、同じ景色を見ながら語り合うのとでは意識が違う。お互い前を向いたまま、時折チラと視線を合わせる。これは他者と、同じ時、同じ空間を共有していながらも、ひとりでいる状態といえる。相手と会話しながらも、自分と向かい合って話しができる、深い心の会話がなされやすい状態にある。
これによって思いを語り合い聴き合うことができるらしい。諸富氏は恋人や夫婦もこの関係がよくて、しっかり向き合う関係が必ずしもいい関係とは限らない、とも述べておられる。
カウンターにはウイスキー
ね、なるほどでしょ。私は「そうだ、そうだ、たしかに」と大声で叫びたくなった。そしてカウンターを守るバーテンダーにもこの本を読んで欲しくなった。カウンターにはやっぱりウイスキー。私は今夜もひとり酒 |
量をたくさん飲む必要はない。薄い水割りでも構わない。いいウイスキーは水で延ばしても芯が崩れることがない。ちょっと背伸びする非日常。この時間が私は大切だと思う。
諸富氏の“カウンター席で「ひとり」を練習する”は是非読んでいただきたい。他に“香りや置物で心のモードを変える”“ひとりで入れるカフェを見つける”“近くのシティ・ホテルに泊まる”“デッドスペースを探そう”なんて項がある。
非常にわかりやすい文章で、肩が凝らない。気軽に読める本だ。バッグの中に入れて、電車の中でどうぞ、とすすめる。
前回の同シリーズ『21回 女のひとり酒のススメ』もご一読いただきたい。