キャッツアイ夢中の牡蠣博覧会
いつも“ウイスキーが手招きする店”シリーズの探求には、ふたりのチャーミングな女性に同行してもらっている。3月に入って、そのうちのひとりが、こう誘ってきた。「日本だけじゃなくて、いろんな国のオイスターが食べられる店が新宿にオープンしたらしい。いってみようよ」
日本人は牡蠣好きが多いのに、海外と比べるとオイスターバーと呼ばれる店が極めて少ないと、私がこぼしていたのを彼女は覚えてくれていたようだ。
さらに追い討ちをかける。生牡蠣のソースのひとつに、ボウモア12年のサービスがあるというのだ。ありゃりゃ、ウイスキーに手招きされちゃった。
上/全面ガラスの開放感のある店内。下/世界各国の牡蠣の盛り合わせ。 |
メニューを見ると、あるわあるわ。厚岸、的矢、女川といった日本産からアメリカ、フランス、ニュージーランド、オーストラリアはタスマニアといったところまで生牡蠣万国博覧会。産地直送で常時14~15種用意されているらしい。
自分でも驚いたのは、私はいろんな国の牡蠣を結構食べていることをメニューで知った。タスマニアのキャッツアイも現地で食べている。外国産で経験がないのはニュージーランドのパシフィックだけだった。
そんな話をふたりの女性に得意げにしながら、私は突然ひらめいた。
「そうだ、キミたちをこれからチーム・キャッツアイと呼ぼう」
こう言ったのだが、出てきた盛り合わせにふたりの目はキラキラ。私の言葉を無視して、ひとりはアメリカのクマモトに手を伸ばし、ひとりは宮城の女川をすでに口に含んでいた。まったくもってネコ夢中状態なのだ。
嬉しいボウモア12年ソース
ここでソース。赤ワインビネガー、ホースラディッシュ、ポン酢、チリソース、カクテルソースが出され、お好みでどうぞということなのだが、あった、あったのだ。ボウモア12年のミニチュア瓶がちゃんと添えられている。もうスキップしたくなってしまう。香水瓶やビターズボトルの尖端を思わせるキャップが装着してあって、数ダッシュ牡蠣に振りかけるのだ。
ご存知の人も多かろうが、スコットランドのアイラ島も旨い牡蠣が食べられる。ボウモア蒸溜所の関係者と食事をすると、牡蠣にボウモアをかけろとすすめる。ところが、アイラよりも新宿のほうが旨いのだ。どうして、と首をひねりながら食べていたのだが、二個目を口にして理由がわかった。(次ページへつづく)