これまでの道程を辿ってみて、いまこの時間にこの場所にいてこの文章を自分が書いていることだけでも不思議である。わかっているようで、実はいちばん理解できていないのが自分自身なのではなかろうか。
自分自身の謎解きにふさわしい酒、それがウイスキーだ。ゆったりと口の中を潤していくと、頭の中をいいリズムで知が巡る。私にとってウイスキーは過去を反芻し、現在を見つめ、未来へと思いを馳せるために不可欠な魔法の水だ。
琥珀の滴はまさに変容する。滴のタイムカプセルとなり時空を旅し、またある時は滴の鏡となり自分自身を映し出す。ウイスキーはいつでもしっかりと私と向き合ってくれる。
福井晴敏氏の謎
600ml、アルコール度数43%、¥5.250。発売は10月4日。 |
推理作家、ウイスキー、謎というのはうまくできた構図で、樽熟成の長い年月を経て生まれるウイスキー自体がミステリアスだから、プロモーションとしては面白い。
今年、山崎蒸溜所で『謎』づくりに挑戦したのは逢坂剛氏、北方謙三氏、大沢在昌氏のいつもの顔ぶれに、桐野夏生氏、東野圭吾氏、福井晴敏氏の6名。この中から『謎2005』に選ばれたのが福井晴敏氏の『AEGIS』(イージス)だった。
自身の作品で映画化され、今夏話題になっている『亡国のイージス』にちなんでイメージした味わいだ。
7月28日、新宿厚生年金会館で映画『亡国のイージス』の試写会があり、併せて製品披露会がおこなわれた。
日本推理作家協会理事長、大沢在昌氏の挨拶にはじまり、サントリーチーフブレンダー輿水精一氏の解説、福井晴敏氏の挨拶とつづいた。
私もその会場にいたのだが、『AEGIS』の香味はなかなか重厚なもので、そしてなんといってもラベルが格好いいのだ。海上自衛隊の協力を得て、イージス艦がシルエットでデザインされている。(次頁へつづく)