立ち呑みバーと書くとクールじゃないので、スタンド・バーという言葉も併用しながら話をすすめる。
昔から日本的な立ち呑み店があり、また東京・六本木といった大都市の外国人の多く集まる場所には立ち呑みのパブもあったりもする。そんな中で最近は洒落たスタンド・バーが増えてきている。
立ち呑み店というのは、簡単にくくってしまえばファスト・フード店といえるだろう。これまでの夜のファスト・フード店は女性たちが気軽に立ち寄れる空気を持ち得ていなかったのだが、ここしばらくの間に誕生した店の多くはかつてのイメージとは随分と異なる。
目立つのはヨーロッパの居酒屋であるバール、あるいはパブをよく研究した店だ。酒類が豊富で、料理の質も高い。大人の社交場を目指して店づくりをおこなっている。内装も洒落ている。
こうしたスタンド・バーなら女性が気後れすることなく、構えることもなく心地よい時間が過ごせる。友だちとふらりと立ち寄ってみるといい。いつもの居酒屋、ダイニング・バーとはひと味違った空気感があることに気づくだろう。
それにスタンディングだから、グダグダと長い時間飲んで食べてということにはならない。軽い会話と酒と料理を愉しんで美しく立ち去る。これが大人の粋だ。
江戸っ子はスタンディング
日本人の中でも、江戸っ子というのは昔からファスト・フード店が大好きな人種だ。寿司、天ぷら、うなぎ、そばなんていう食べ物は、そもそも江戸時代には屋台で売られていた。江戸の町は年がら年中、いたるところで工事をしていた。江戸の花といわれた火事。どこかで火事の修復工事がおこなわれていたし、江戸前の東京湾は埋め立て工事をずっとやっていた。だから職人の数がべらぼうに多く、手っ取り早く食べられるファスト・フード店が人気になるのは当たり前だった。
立ち食いそば屋はいまでも忙しい仕事人の強い味方だが、その姿は江戸の昔からなんも変わっちゃいないともいえるのだ。だから江戸っ子のDNAを持ち得ている人は、立ち食い、立ち呑みとか、屋台といった店は、違和感なく受け入れやすいものではなかろうか。(次頁へつづく)