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ウイスキー&バー/バーで気をつけたいマナー

15回 ウイスタンって、知ってるかい(2ページ目)

前回のハイボールの第二弾。かつてウイスタンという瓶詰め製品があった。ハイボールが古いカクテルだってことを伝えるために、日本の清涼飲料の歴史もちょっとだけ解説してみた。たまには勉強の記事もいいじゃない。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

ウイスキー&バーガイド

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『ウイスタン』は瓶詰めハイボールだった。
ウイスキー&ソーダ、ウイスキーの炭酸割り、だから『ウイスタン』。これを世に出したのはサントリー(当時寿屋)創業者の鳥井信治郎だった。

日本での本格的なウイスキーづくりは1923年(大正12年)に着工したサントリー山崎蒸溜所にはじまる。ではそれまでの日本で飲まれていたウイスキーとはどんなものだったか。

輸入スコッチは嘘みたいに高価で、ごくごく一部の特権階級の酒だった。一方で、いろんな会社が国産ウイスキーと称して、アルコールにカラメルや香料を混ぜたイミテーションをつくっていた。

ハイボール
これからの季節、ウイスキーのハイボールで愉しみたい
ここからは私の推論がかなり入っているので注意していただきたい。
第一次大戦前、ドイツはスコッチの市場を乱すために、戦略的に混成ウイスキーを大量にばらまき、世界中の市場を荒らした。これはトウモロコシや小麦からつくったグレーン・アルコールに香料を混ぜたものだった。

鳥井信治郎もそれを買ってみたものの、ひどいシロモノだった。仕方がなく、ワインの古樽に詰めて倉庫の奥にとりあえず置く。これは事実らしいのだが、信治郎はそのことを忘れてしまった。何年も経って、この樽は何だっけ、と開けてみたら劇的に味が変化していた。つまり樽熟成の神秘を身を持って知った訳である。

余談だが、この体験が後の日本初の本格ウイスキーづくりに生きているといえる。信治郎の口グセのひとつは「酒は寝かせてみなはれ」だったのだから。

ジャパニーズのハイボールを飲もう

その劇的に変化した混成ウイスキーをソーダで割って『ウイスタン』として発売したのだ。ただ売れなかった。信治郎は新時代の花形製品と勢い込んだらしいのだが、ウイスキーに馴染みのない時代に、そのソーダ割りと言われても大衆が受け入れるはずがない。まあ、いまだから言えることだけど、時期が早過ぎたんだな。

ただ彼は小手先では売れないことを実感し、なんとしても本格ウイスキーをつくる、という執念を抱いた。そして熟成というものに魅了された。これが私の推論だ。つまり不人気『ウイスタン』は、ジャパニーズ・ウイスキー誕生の、きっかけのひとつになっているのではと言いたかったのだ。

さて、これからの季節、ウイスキー&ソーダが旨いよ。できたら冷蔵庫にソーダ水を常備して欲しい。そしてジャパニーズ・ウイスキーと氷、好みでレモンスライス、これらを用意して、ハイボールを飲もう。

これぞ大人の喉ごし。お手軽カクテルなんだけどな。

前回の男は読むな!記事14『ハイボールってなんだ』もご一読いただきたい。
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