本多氏のサービスで称賛したいのは、ウイスキーのグラスの選択だ。彼は私がこれはと思う希少品や新製品でない限り、テイスティンググラスでウイスキーを飲むことがないと知っているから、サッとショットグラスに注いでくれる。
ベネチアのハリーズバーのショットグラス。 |
また時に「ショットグラスのちょっと大き目なのに入れて」と私が言うと、本多氏は頃合いのサイズのものにウイスキーを注ぐ。ストレートでふた口ほど飲んだ時に目配せすると、それにウイスキーと同量のミネラルウォーターを注いでくれる。
私はトワイス・アップというウイスキーと水1対1をひたすらゆっくり飲むのが好きだからだ。氷は入れない。
彼はロックグラスにウイスキーのストレートを注いでくれたりもする。大ぶりのグラスに香りが広がって、なんて野暮な詮索はしないでいただきたい。
ロックグラスにストレートだから、グラスの底にウイスキーがちょっこっとある、といった絵になる。だがズンと手に加わるグラスの重みを感じるのがいいのだ。これって粋だよ。女性には合わないけど。
ダンディズムが死語になった理由。
ブレンダーといったプロフェッショナルでもないのに、何でもティスティンググラスに鼻を突っ込んで、鼻の粘膜が痛くならないのかと質問したくなる光景は、もう終わりにして欲しいと思う。上/トワイス・アップをこんなグラスで飲む。下/左がトワイス・アップを飲むショットグラス。右はロックグラス。 |
ダンディズムという言葉が死語になるのは当然で、ちょっと昔、ダンディと呼ばれた男たちは酒を小道具にしていた。ところがいまの男たちはウイスキーやシガーを主役に奉り、自分たちはその下僕のように「アリガタク、チョウダイしますだ」スタイルでバー・カウンターにしがみついている。
これではTV番組なら何でも出演したい、ダンディ坂野の姿ではないか。ダンディ坂野はいい奴だとは思うけど、ゲッツ。
だから女性たちよ、グラスを愉しんでみて欲しい。男たちは女性たちが何やら「グラスを愉しんでいるらしいよ」と聞くと、すぐ右へならえする。そうすればテイスティンググラスしか知らない奴らも、「いつも飲んでいるウイスキーだから、ショットグラスで」ぐらいの口がきけるようになる。
次回は11月。バーに不慣れな女性たちは、何曜日にバーへ行けばいいのか、その理由も書く。
前回の『バーで飲む食前、食後酒』もご覧いただきたい。