酒に弱くてもバーを愛するひと
これまでのふたりはかなり飲める女性だ。どちらも自分の好みの酒を熟知していて、上手に飲みこなしている。異なる点は涼風の人が引き際が見事で、女王は長尻だということ。では最後の女性はというと、この人は非常にアルコールが弱い人だ。
30代前半で独身。あるバーでよく出会うのだが、上司や仕事仲間といる時が多い。上司は四十代半ばで、かなりの酒通でいい男だ。しかも飲めない彼女に無理にアルコールをすすめない。だから彼女の飲むものはフレッシュフルーツを使った低アルコールのジュースみたいなカクテルを2杯と、その後はウーロン茶だ。
ある土曜日。バーの口開けの早い時間に彼女がひとりで登場した。客は私ひとりで、彼女は顔見知りの私にペコリと頭を下げ、そしてバーテンダーに「コーラください」と言った。私は、やるな、と思った。美容院の帰りで、これから友人と映画を観るという。待ち合わせの時間つぶしである。こんなバーの使い方ができる人は格好いい。その夜10時半頃、彼女は友人ふたりを連れて、またそのバーに登場したらしい。酒が飲めなくても客は客。行きつけの店を見つけて上手に使いこなせる人が粋だ。店側も大切にしてくれる。
では今回はここまで。次回は9月になるが、食前酒、食後酒について語ろうと思う。
前回のこのシリーズ、『幼稚なボクちゃんが教えてくれた』も参考にしていただきたい。
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