とりあえず緊張していく。
あらたまったテイスティングが苦手だ。どうも間が持たない。色を見て、ノージングして、口に含み、といった官能作業がやっているうちにまどろこしくなる。
早い話、ただの呑ん兵衛ということだ。ゆったりとした中でクィックィッと飲みたい気持ちが強烈に湧き起こってくる。
本業はコピーライターだが雑誌に酒に関する文章を書くことが増え、それによりいろんなテイスティング・セミナーへのお誘いを受けるようになった。どんなタイプの酒、未知の酒に出会えるか楽しみでもあるのだが、会場に行って席に着くと決まって緊張する。いつまでたっても慣れることがない。なんだか堅苦しいのだ。
そんな私がザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ(SMWS)日本支部からお誘いを受けて、東日本の会員のための春のテイスティング会に出席した。
3月27日(土)、会場は東京・新宿のヒルトン東京のSt.George's Bar。なんたってモルト・ウイスキーファンの集い。会員でもない自分は場違いな男じゃないか、と思ったりしながら出かけた。
会場に行くと知人に3人ほど会えてちょっと安堵した。
またサントリーのチーフブレンダー輿水精一氏、ニッカのマスターブレンダー佐藤茂生氏も招かれていて、力の入った会であることがうかがえた。
ご存知ない方も多いだろうから、SMWSとは何か簡単に説明しておく。
スコットランドはエディンバラの港町リースで、数人の仲間が蒸溜所から樽を購入して分け合った事にはじまる。そのうちに仲間は増え、発展してソサエティを形成するようにまで成長。設立は1983年。20年以上経ったいまはエディンバラを本部に、世界14ヵ国に支部が広がり、3万人を超えるモルトウイスキー愛好家たちの会員組織となっている。日本支部が誕生したのは1993年のことになる。
SMWSのモルトウイスキーとは何か、ということになるのだが、「熟成されたままのウイスキーを飲みたい」という基本方針がある。そのため本部の選定メンバーが各地の蒸溜所の協力を得て樽を厳選し、樽からそのまま瓶詰めしたものだ。
つまり市販されている多くのボトルとは違う。飲みやすいように加水してアルコール度数を調整することもなければ、樽どうしをヴァッティングすることもない。まったくの樽出し原酒、シングルカスクということである。
ジャパニーズでは、サントリーの山崎、白州、ニッカの余市の3蒸溜所のものもボトリングされている。