前回、あまり意図しないで触れた酒齢だが、反響が大きかったため、もう一度簡単に説明してみることにした。
ブレンデッドウイスキーのダシと味噌の関係の詳細と初心者へおすすめの一瓶は次回となる。おゆるし願いたい。
さて、ウイスキーの酒齢。熟成年数1年は、人間にたとえるならば4歳と述べた。これはポピュラーなスコッチやジャパニーズに当てはまる。そこで製法や貯蔵法によっても異なると述べた点について、ちょっと説明しておきたい。
たとえばバーボン。これはアメリカンウイスキーの代表だ。
トウモロコシを主原料にしてつくられるのだが、熟成の樽に特長がある。バーレルという180リットルほどの小さな樽で熟成をおこない、使うのは新しい樽のみ。しかも内側を焦がしたものだ。
そのため木香や焦げ臭といったものが強くつく。だがこの焦げ臭こそがバーボンの個性だ。そこからあの日向の香りがする味わいが生まれる。
小さな新樽で、内側を焦がしてあることで熟成のスピードは早まる。4年ほどの熟成で世の中にたくさん出回っている。
バーボンに関していえば、酒齢1年は人間でたとえると8歳ぐらいと考えられている。
バーの棚でよく見かけるワイルドターキー8年(小売価格¥3,150)。これなどは長期熟成の部類に入る。人間にすれば人格重厚な64歳ということになる。大麦とトウモロコシという原料の違いもあり一概には言えないが、前回紹介した響やバランタインの17年ものと似たような熟成度になるだろう。
この熟成の早さは樽の特長だけではなく、アメリカのケンタッキーの乾燥した気候条件も相まって、スピードを増す。
スコッチの人気シングルモルトにラフロイグ10年(小売価格¥6,000)がある。こちらは10年だから40歳と考えるのも早合点。ラフロイグは一度バーボンで使われた樽で熟成させるので、新樽ではないといってもやはり熟成のピークは、通常のスコッチより早いといえる。
またスコッチでもローランド地方でつくられるシングルモルトのオーヘントッシャン10年(写真左/小売価格¥5,100)。これもラフロイグと同じで10年だから40歳と思うのは間違い。もう少し年齢は高いと考えた方がいい。
オーヘントッシャンは通常2回蒸溜のところを3回おこなっている。3回蒸溜となるとモルト原酒は非常に軽いタイプになり、樽に寝かせると熟成のスピードもやはり早くなるからだ。