こちらの火入れも見事です。口に入れる→噛む→飲み込むという過程をコントロールされているような、無駄のない焼き具合。噛む回数は長すぎず、そして短すぎず、心地よい長さに設定されています。その絶妙な火入れによって生み出された肉汁は素晴らしく美味。脂の甘い味わいは、つけ合わせのイチヂク入りポレンタの甘さともよく合います。
・デザート:オレンジのサバイヨン
クリームのしっかりした味わいに、オレンジのさっぱりとした甘みがマッチします。サバイヨンの仕立ても丁寧にしてあるので、とろみがあり、満足感の高さはコースの最後にピッタリ。ここまでの料理全体が濃いめの味付けですので、「フランス料理を食べた!」という達成感があります。
・プティフール&ハーブティー
このお値段でプティフールまでついてくるのが何とも嬉しい。確かにフランスだとちょっとしたお店なら必ずと言っていいほど、小菓子がついてきますが、なぜか関西では少なめです。フィナンシェもラングドシャも自家製とのことで、素朴な味わいですがほっこり。ハーブティーもローズの魅惑的な香りにミントなどを加え、すっきりとした味。
町家が育む、レストランの個性
中にキャベツとフォアグラを詰めてローストしたウズラは、肉汁をたっぷり吸い込んだキャベツまで美味 |
竹村シェフは、修業先のレストランを探すために、渡仏前に何通も手紙を書いたそうです。フランスで修業経験のあるシェフはたくさんいますが、一つのレストランに2年半いた方というのも珍しいパターン。その熱意と根性が、フランス料理そしてフランスという国の精神を、シェフに浸透させていったのでしょうね。
味は懐石風フレンチの多い京都では特に濃厚系に感じられます。しかし、シェフは「フランスで感じたもの、得たものをそのまま出していきたい」ということで、この味でいきたいとのこと。手作りの町家という京都らしい空間を使いながら、京都フレンチの料理における幅が広がったのは間違いありません。
2回にわたって京都の町家フレンチをご紹介しましたが、同じ京都らしい空間でも、料理を含めたレストランとしての方向性はまったく異なります。この違いこそが、レストランの幅であり、町家に頼らない個性なのです。いちフレンチ好きとして、このようなレストランたちが出てくることをとても嬉しく思います。
建屋の前にはクローバーが敷き詰められています |
■「ア・プ・プレ」
所在地:京都府京都市下京区的場通新町東入ル銭屋町249
TEL: 075-361-3231
定休日:日曜ディナー・月曜日
営業時間:
昼 11:30~14:00(ラストオーダー)
夜 18:30~21:00(ラストオーダー)
交通・アクセス:京都市営地下鉄・五条駅から徒歩3分
地図:Yahoo!地図情報
HP:ア・プ・プレ
■シリーズ-趣きのある建物
エピス(フレンチ・出町柳)
ア・プ・プレ(フレンチ・五条)