千年古茶
とてもまろやかで自然に体にしみこむ前田さんのお茶
前田さんの扱うお茶の中心は、そんな普[シ耳]茶。
特に、雲南省思芽及び西双版納地域にかけて群生する、樹齢数百年の大葉種の喬木型茶樹から作られた、いわゆる「千年古茶」。栽培茶といっても、原生林の中で育てられるこれらのお茶はほとんど放置状態。
自然の養分で生長した茶樹から採取された茶葉を丁寧に餅茶にしたものを、焙煎しするのが前田さんのお茶です。そのお茶は、前田さんが淹れると、本当に体にすうっと染み込んでいくような感覚です。口の中にやわらかい香ばしさが広がった後、甘い茶がすうっと染み込んでいくのです。
そのままでは渋みが強くて飲めない青餅は、年月をかけて丸く柔らかなお茶に変身していきます。また、発酵を最大限に施した紅茶も、大葉種独特のアクが強いお茶として仕上げられます。
これらのお茶に独自の焙煎を施すことにより、「時間の経過を待たずに美味しく飲める」ように、また「多すぎる水分を飛ばし甘みと滋味を凝縮した」お茶に仕上げられるわけです。
そんな彼女の扱うお茶は、師匠の宋さんが焙煎した「雲南青プーアール」、「雲南黒プーアール」、「千年古茶青プーアール」、「千年古茶紅茶」、「香竹筒仕立て」や彼女自身が火入れをしたお茶など、いろいろとそろっています。
新しい試み
この春取れた気仙茶に火入れしたもの
数年前から前田さんが注目しているのは、岩手県南部で作られる気仙茶なのだそうです。
気仙茶は江戸時代から作られてきたものだそうですが、そのほとんどが自家消費用のお茶で、一般の人が飲む機会がほとんどないお茶なのだそうです。いまでは、茶樹自体も少なくなっており、その中には人の手が30年以上加わっていない半野生化した茶樹もあるのだそうです。
そんな、ナチュラルなお茶なら、よいお茶を選ぶことを使命とする前田さんの目指す方向と重ならないわけがありません。
早速気仙の農協へ行き、茶畑を見せていただいたり、お茶を取り寄せて焙煎の試験をしてみたり。
その結果、気仙の在来種の、しかも手が加わっていないお茶が、爽やかで甘いお茶に仕上がることが解りました。
それを緑茶、そして烏龍茶に製茶し、前田さんの焙煎を経て仕上げられたお茶は、2006年10月に世界緑茶協会の「第6回O-CHAフロンティアコンテスト」で、銅賞を受賞しました。