残留農薬が多量に含まれた茶葉は、まず検疫で食い止める


中国茶・台湾茶の農薬問題は、前回の記事「中国茶は安全か(1)」で見たとおり、現在は中国産、台湾産とも烏龍茶が輸入したものはすべて命令検査(強制的に残留農薬などの検査を行うこと)の対象になっています。また中国産の緑茶についても同様となっています。

消費者としては安心ですが、そもそもこのような命令検査が行われるようになった理由が、一定程度の農薬が残留しているお茶が見つかったからです。任意に抽出して検査を行うモニタリング検査、初回の輸入や違反事例の多いものについて特定の農薬のみを検査する行政検査が初段階にありますが、さらに、違反事例が続出するようなケースについて実施される命令検査になると、すべてのものについて、特定の農薬の検査が強制的に行われるわけです。

そもそも、そうしなければ、農薬の残留した烏龍茶などが国内に流入してしまうからです。そして、中国産の紅茶、プーアル茶、台湾産の緑茶、紅茶などは、引き続きモニタリング検査ですから、全てのものが安心だとは言い切れないということがご理解いただけたと思います。

基本的には、輸出国側でのしっかりした体制がまず第一で、それを輸入する業者がさらに確認することが二番目に重要なことなわけです。

では、そもそも、輸出国側の対応はどうなっているのでしょうか?

中国側での対応



果樹園の下に植えられた碧螺春の茶樹。
果実の農薬がかかる場合もある。


日本でも同じですが、生産国の市民向けに作られた商品の農薬検査に関しては、かなり甘くなりがちであるのが現状です。特に中国の場合は、国内での各種5カ年計画で農薬で汚染された農作物の撲滅運動を行ってきましたが、まだまだ手薄というか、効力を発揮していない状況のようです。

数年前までは、茶葉市場での検査の結果、合格したものが7割。つまり3割は不合格しかなかったという報道がありました。また、工業用染料が茶葉に使われたり、ドブの横でプーアル茶が作られていたという報道も目にとまりました。昨年にもジャスミン茶の原料になるジャスミンの花に、大量の農薬が散布されているなどといった話が報道されたりもしました。

この状況は改善されてきたとはいえ、まだまだ大量に生産されるような茶については、害虫駆除などのために農薬は必須ですから、残留農薬が基準以下に抑えられるような管理が、中国国内でどこまで出来ているかは不明です。

近年、中国国内でも国や各省が緑色食品などの企業を作るなどの対応に積極的に取り組んできのは事実です。その状況は、過去、「農薬問題について考える」でご紹介しましたので、そちらをご参照ください。



緑色食品が管理する烏龍茶の茶畑


しかし、全てが緑色食品を通しているわけでもないことからあらゆる茶葉を安全に輸出する必要性がでてきたこと、そしてヨーロッパや日本における輸入規制の強化に対応するため、中国政府は最近輸出用茶葉に関して中国検研局(China Inspection Quarantine)による検査を義務付けました。

EU向けと日本向けの製品全ての輸出用中国茶葉に関して、中国検研局による農薬の検査が行われることになったわけです。産地で行われる検査(100%実施)に加え、港でのモニタリング検査が行われ、この検査に合格した商品に関しては、レーザーで偽造防止の措置が取られた「出入国検験検疫マーク(以下CIQマーク)」が指定された場所に張られて出荷されます。

EU向けのポジティブリストはかなり高水準であり、現在中国における茶葉の輸出はEU向けが大部分を占めていることから、これをクリアしない茶葉が多いと、がっくりと輸出が減少してしまうため、中国政府も本気になって対応しようとしているようです。遅ればせながら、日本も農薬検査に関しても、EU基準に近づける努力をしてきたことから、中国もやむを得ず、対応せざるを得なくなってきたのでしょう。

ただし、現在は港でのモニタリングがアメリカ向けには100%行われるものの、その他の地域に関しては20%程度と件数が少ないことに加え、日本のポジティブリストから考えると検査項目が10品目程度と検査範囲が非常に狭いという状況にあるのも事実です。



出荷される前の中国紅茶(武夷山市桐木・正山小種)


実は、このような義務検査を受けることになると、一般の製品よりも原価が高くなります。さらに、検査項目の少ないCIQの検査を受けたから問題なしとできない部分ももちろんあります。そのため、中国国内の茶企業もより一層の対応を迫られています(福建茶葉進出口有限公司などの対応が参考になります。)。

特に、現地の人が自分用に作っているような完全なオーガニック茶は、数量が少なくしか作れませんから、実際には大規模な販売経路には乗りません。大規模に輸出するために大規模工場に集められるお茶の場合、管理がおこなわれているといっても、どれほどのものかが今ひとつ分からないという部分で、農薬汚染は心配しなければいけない切実な問題といえるでしょう。

また、無農薬有機栽培の茶葉といっても、付近の畑で農薬を使っていると、風で流されたり、土壌の水などを経由して、農薬の被害を被ってしまう場合もあります。実際、平成19年の日本におけるモニタリング検査で不合格になったウーロン茶の事例の中にも「原因は、近隣の茶畑の散布した農薬によるもの」という結果が表示されているものもありました。

一方で、中国国内販売用の茶の場合、このような規制の枠組みから外れますので、少量輸入しようとする個人輸入業者(輸入代行業者)などがいた場合、網の目を潜り抜けてしまう可能性が十分あります。

そのため、より一層の輸出国側での更なる対応が望まれるところです。