多くの人が中国茶に惹かれる理由の一つとして「香り」を掲げます。茶杯の香りを大きく吸いこむと、刻々と変化しさまざまな表情をみせる甘い香り。その虜になってしまう人はとても多いにちがいありません。

その香りは、時に気分をリラックスさせてくれ、身体全体を癒してくれます。そんな癒し効果以前に、香りそのものに惹かれてしまうこともあるでしょう。中国茶は多種多様。香りもお茶の数以上に沢山あり、湯気の上がる茶杯から立ち上る香りは、他の飲み物以上に豊かな表情を見せてくれるのです。

今回は、中国茶の香りの世界を探求してみましょう。



香りの成分

もともと、植物としての茶葉には、お茶を飲むときに感じるような花のような香りはないのだそうです。では、どうしてあんなに素敵な香りがお茶にはあるのでしょう。

お茶の香りは、揮発性の物質です。例えば青茶の花或いは果物のような香りは、「ゲラニオール」とか「リナロール」といった揮発性の化合物によるものなのだとか。製茶された茶葉の中に含まれる揮発性成分は、青茶以外でも、緑茶・紅茶を合わせて約300種ほど知られていますが、いずれも含有量はごくわずかで、茶の香りはこれら数多くの成分がまざって出来あがるのだそうです。

これらの香りは、お茶を作る工程で自然に作られるものです。特に、酸素とお茶の成分が結びつくと(いわゆる酸化発酵)、香りの成分が作られることになり、そのため、緑茶よりも青茶の方が華やかな香りがするというわけです。
(画像は、烏龍茶の酸化を促す「揺青(ようせい)」の作業)

したがって微妙なお茶の香りは、茶葉の作り方、作り手や技術やそのときの天候などにも大きく左右されることになるのです。

香りの種類


中国茶の香りと呼ばれるものを、簡単に分類すると大きく4つに分けることができます。「草・豆の香り」、「花の香り」、「果実の香り」、「土・苔の香り」です。これは大雑把な分け方ですからこれらが微妙に混ざり合ったり、或いは、この種類以外の香りに感じる方も要るかもしれませんね。この辺りは、なんだか中国茶もちょっとワインに似ているかもしれません。

これらの4つの香りでお茶を分類してみると

 草・豆の香り
 草のような青臭さを感じたり、豆のような香ばしさを感じる香り
 お茶の種類:緑茶、白茶、黄茶
 花の香り果実の香り
 フンワリと甘い花の香りや芳醇で豊なフルーツや蜜の香り
 お茶の種類:青茶、紅茶
 土・苔の香り
 独特な土や黴、あるいは、苔を連想させるような香り
 お茶の種類:黒茶

こんな分類でお茶を覚えるのも分かりやすいかもしれません。

▼ 香りによる中国茶区分


中国では、香りによるお茶の区分も行われています。複雑ですから覚える必要はありませんが、こんな区分もあるということで簡単にご説明すると以下のとおりです。

毫香
ハオシャン
白毫の多い茶を淹れたときにふんわりと立つ独特の香りを「毫香」といいます。銀針(ぎんしん)、毛尖(もうせん)、毛峰(もうほう)など、産毛の多い若い芽(ミル芽)のお茶を入れたときに立ち上る香りによるお茶の区分です。
嫩香
ネンシャン
ミル芽の香りが全面的に立つお茶の区分です。峨芯、毛尖、毛峰などの一部で感じる事が出来ます。
花香
ファシャン
いわゆる花の香りを帯びたお茶全般をさす区分です。特に蘭、梔子、珠蘭花、米蘭花、金銀花などの香りを発するお茶です。主に、青茶、紅茶、花茶、緑茶の一部などがこの類型に属します。
果香
グオシャン
桃、蜜桃、雪梨、佛手柑、桂圓(竜眼)などの香りを帯びたお茶全般をさす区分です。主に、福建省北部の青茶、鳳凰単[木叢]などがこのお茶の分類に属します。
清香
チンシャン
清香は、典型的な[火共]青緑茶の香りですが、乾燥するときに火入れを行い、また萎凋する際に揺青をわずかにする一部の黄茶や青茶にも感じる事が出来る香りの区分ですつまり軽発酵で、なおかつ火入れも軽い青茶などの香りを指します。台湾の高山茶、文山包種茶などがこの分類に属します
甜香
ティアンシャン
工夫紅茶の典型的な香りです。清甘香、甜花香、乾燥果物の香り、桂圓の香りなどがするのが特徴です。
火香型
フォシャンシン
[火共]焙の際に火入れを高音で強くしたお茶がこの香りの区分に属します。日本茶で言うとほうじ茶に近い香りですが、中国茶では、黄大葉、古労茶などがこの区分に属します。
松烟
ソンヤン
言うまでもなく、煙で燻焙した香りを持つお茶の区分です。代表的なお茶としては、正山小種、六堡茶、[シ為]山毛尖などをあげる事が出来ます。
陳醇
チェンシュン
製茶工程で寝かせる工程が加わった、陳年香のするお茶の区分です。普[シ耳]をはじめとする黒茶、緊圧茶などがこの区分に属します。




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