「中国茶 香りの万華鏡」の著者有本香さんは、旅行雑誌の編集を長年され、世界各地を飛び歩いてこられた旅の達人。現在はご自分で雑誌編集プロダクション「ウィンウィン」を経営されていますが、その中でも中国茶に関連するお仕事も多いとか。「中国茶50銘茶と楽しみ方」も有本さんの企画編集。そんな有本さんに、お茶についていろいろとお聞きしてみました。


80年代の後半に台湾で茶藝館に入ったのが、有本さんにとっての中国茶との出会いだったそうです。その後、香りの高いお茶が好きで、北京などで烏龍茶を探しても張一元のジャスミン茶ぐらいしか見つけられなかったとのこと。
最近では北京にも台湾系の茶藝館などがいろいろできて、「最近の中国での中国茶ブームには驚かされる」と語る有本さん。

そんな彼女が中国のお茶の多様性に興味を持ったのは、河南省の自由市場の茶荘で「信陽毛尖」に出会ったからだとか。

「台湾の烏龍茶はとてもおいしくて、すぐ大好きになったのですが、大陸の緑茶はそれまでほとんど注意してみてはいませんでした。でも、信陽毛尖を飲んでその土地土地にはいろんなお茶があるのかしらと思ったのでした。それから中国国内をあちこち仕事で歩き回る都度、その土地土地のお茶を探して市場や茶荘などをのぞくようになりました。どこに行っても市場があって、たいていそこには茶荘がありましたから。」

大陸だけではなく、台湾、香港、シンガポールなど、その広い守備範囲の中で中国のお茶を捉えている有本さんの目には、お茶はどのように写ったのでしょうか。
「お茶は中国の文化に根ざした飲み物。生活の中にあってこそ、お茶は本領を発揮するのではないでしょうか。」

たとえば華僑の人たちがたくさん暮らすシンガポール。有本さんの親友がラッフルズホテルの中でお茶の専門店を営んでいるそうです。キャリー・タンさん。最近では現地に駐在している日本人のお客さんも増えたといいます。

「「このお茶来週までに入る?」という日本人のお客さんたちの質問に、彼女が「わからない」と答えると、お客さんの多くが怪訝な顔をするのだそうです。彼女にとっては、お茶は農産物。入るときもあれば入らないときもある。生活の中の茶って、そういうものでしょ。」

そのキャリーさんの自宅に遊びに行くといつもお茶を入れてくれるのがご主人のドクター・タン。「夫婦してお茶を楽しんでいる姿は、とてもいいなと思います。「今年の春の安渓鉄観音はとても出来がよいんだよ。」という彼のお茶に対する愛情は、教えられることも多いのですよ。」とのこと。

生活に根ざすといえば、台湾の茶業博物館の帰りにおいしい文山包種茶とであったことを話してくださいました。

「車で市内に帰るときにあまりにもお腹が空いてしまって、どこでもいいから食べるものをということで、車を止めて屋台のようなところで食べるものを買ったのです。

そのお店の横の広場のようなところで、これもまた屋台のような茶荘が店を出していました。ちょうど店じまいをするところだったようですが、無理を言ってお茶を分けてもらおうとしました。お店のおばさんは少ない量は売れないというのをなんとか数斤だけ。ところがこのお茶がとてもおいしかったのです。地元の人たちはこういうところでお茶を大量に買って、それを一年中飲んでいるのですよね。」

ちなみに、有本さんはそこでおばさんに「日本人はこういうお店に買いに来るか」と聞いたそうです。おばさんは「日本人はこないねえ」とのこと。「台北の茶荘や茶藝館の人たちが買いに来るので、日本の人たちの口にも入っているかもしれないけど」ということ。こんなエピソードを通じて、有本さんのお茶に対する見方がよくわかりました。



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