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やや熟成の進んだリースリングとのマリアージュは実に楽しい |
わずかに紫蘇の風味をつけたフォアグラのテリーヌは穴子と焼き茄子を間に挟む。今日の私は焼き茄子がどうして好きなのだろうか。。。3つの素材がちょうどいいバランスで舌を刺激する。イチジクとオレンジのピュレを絡ませ交互に重なり合いながら、とろけつついろんな感性を刺激する官能的とも言える味わい。そこに注がれるのはアルザスのリースリング・グランクリュ。これにはやられた。
料理と言う世界に集中していた私たちは注がれるワインと共に下界に流れ落ち、私たちの席の一角だけが天からの光を浴びているかのよう。おかしいな、今回は何故か酔ってもいないのに浮き立つ言葉が消えていかない。
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香りが沸き立つメインディッシュ |
メインディッシュは玉葱のチャツネを巻いた兎の背肉。小さな腎臓やキノコ類も添えられ、これは季節感を反映した正統なメインディッシュではなかろうか。ふだん草(うまい草とも言われ鉄分やβカロチンが豊富な葉野菜)とオリーブを軽く煮込んだソースが比較的軽めに背肉を包み込む。
尾長鯛のブイヤベース仕立ては皿の端に軽くリゾットが添えられ、スープと混ぜ合わせるとその香りだけで食欲は突き抜ける。鯛の身の締まりも申し分なく、安心していただける一皿か。
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盛り付けのデザインも楽しい |
デザートも緻密に構成されている。スミレの香りをつけたフルーツカクテルはアイスやグラニテとの絡みが楽しく、パイナップルの味わいとグラニテが絡み合うプディングも意外な取り合わせに小さな驚きをもって食欲が綺麗に着地する。
そこそこのボリュームを食べているが、最後まで悠々とたどり着けるのはカロリーの低さからかそれとも食欲(オレキス)のせいなのか。いや、今回はワインとの組み合わせが抜群に効果的だったとしか言いようがない。サービスして下さったのは春藤祐志氏。にこやかな笑顔の中に、切れ味鋭い選球眼、いや、ワイン眼を持つ方に違いない。