臼関節を支点に振り子のように腕を振る

疲労困憊したあとで、少しでもタイムの落ち込みを防ぎたいなら、腕が頼り
疲労困憊したあとで、少しでもタイムの落ち込みを防ぎたいなら、腕が頼り
このように腕の振りはランナーによってさまざまです。それはピッチとの関係、スピードとの関係、体型(特に男女差が大きい)との関係が影響するためです。条件によってバリエーションはあるのですが、基本形は、腕を真っ直ぐに下げた状態から、肘を曲げて前腕を上げ、肩の臼関節を軸にして無理のない範囲で進行方向に対して平行に振り子のように振ります。人間の体型上まったく平行に振ることは困難であり、引いた肘が外に開き、振り出したときには拳位置が体の前に来ることはある程度やむを得ません。

手はよく「卵を軽く握った感じ」などといわれますが、要するにリラックスした拳状、ということです。手に限らず腕に力みは禁物です。拳にせよ二の腕(上腕)にせよ肩にせよ、力が入っていると腕が滑らかに振れません。肩の臼関節に滑らかに回転するベアリングが入っているというような気持ちで振り子のように腕を振ります。

肩の付け根から振らない

よく見るのが、腕を振るだけではなく肩の付け根から振っている、要するに肩を振ってしまっているランナーです。人間の腕の付け根は、鎖骨や肩胛骨の付け根にあると考えられるのですが、そこから振ってしまうと、体軸を回転させ大患の筋肉を疲労させます。腕の長さを長くしてしまい、早いピッチを得る上で障害になります。

肘曲げの角度は走りと相関関係がある

ここで、その腕の長さについて触れましょう。これは、腕の折りたたみ角度と大いに関係があります。

高橋尚子さんは、腕を鋭角に折りたたんだフォームでした。野口みずき選手は腕を90度前後に曲げたフォームでした。箱根駅伝初のアフリカからの留学生ランナーとなり、驚異的なスピードで日本の陸上界を震撼させたオツオリ選手(若くして交通事故で亡くなりました)もロングストライドながら腕を鋭角に折り曲げていました。選手は、腕の曲げ方によって自分のピッチとバランスをとっているのです。

腕を鋭角に折り曲げるということは、腕を短く使うということです。腕を伸ばすにつれて腕は長くなります。腕が短いということは早いピッチを作るのに有利です、腕が長くなるとピッチは遅くなります。これはメトロノームや振り子時計を遅らせたり早めたりする調整に、振り子についたおもりを移動して重心を移動することから想像がつくでしょう。

すなわち腕を折りたためばピッチを早めるのに有利ですから、ピッチ走法に向いています。すなわち高橋尚子さんにはぴったりだったわけです。

腕を伸ばせば、ピッチが遅くなります。蹴りの強いストライド走法に向いています。長身で足が長い人にピッチ走法は合理的ではないので、腕を鋭角に折りたたんでもバランスが悪く効果が少ないということになります。

しかし、手足が長くストライド走法のオツオリ選手はなぜ腕を鋭角に折りたたんでいたのでしょうか。腕が長いので、ある程度折りたたまないとピッチが遅すぎるということが考えられます。おまけにストライドがあるだけでなくピッチも早くする(だから速いのですが)からやはりある程度腕は短く使わないとバランスがとれない、ということだったろうと思われます。