トレーニング用語、ランニング用語の定義

トレーニングは目的をもって行う

トレーニングは目的をもって行う

トレーニングメニューを見ると必ず出てくるのが、指示に用いられる「ジョギング」「LSD」「インターバルトレーニング」「レペティション」「ペース走」「ビルドアップ」「スピードトレーニング」「タイムトライアル」といった語句です。これらの語句について公式な定義はなく、その意味は説明するここの方に委ねられている、すなわち複数の基準があることになり、説明を受ける者を混乱させます。

さらに混乱させられるのが、「80%の力で」というような科学的なようで実は曖昧な感覚的表現です。筋トレのようなトレーニングなら負荷を20%減らせば80%になりますが、ランニングでは何を基準にするのかよくわかりません。
もし速度を基準にすると、全力で走った場合の速度の125%の速度が80%の力によるランニングとなりそうですが、これでは1000mを全力走で4分の方にとて5分をかけるランニングということです。ウインドスプリントの練習時にそうした指示を受けたことがありましたが、「80%の力で」は力を抜きすぎです。

トレーニング強度は心拍数で

こんなときに心拍数を基準にすると理解しやすいでしょう。
最大心拍数が200の人の場合、「80%」は160です。「心拍数160の運動強度」でということになります。
「ジョギング」「LSD」以下挙げた各種のトレーニングも運動強度に限って言えば心拍数に置き換えればわかりやすくなります。
しかし、ここでまた問題があります。心拍数にはたいへんに個人差があるということです。運動経験、肥満度、年齢、生来の体質、性別などでかなり異なります。ハートレイトモニターの使用説明書などに載っている運動強度と心拍数の表は、おそらく平均的な数値なのだと思いますが、平均値とは平均値に該当するデータがなくても出てくる値ですから鵜呑みにはできません。

結果、心拍数によって運動強度を区分するには、その人の安静時の心拍数、ジョギング時の心拍数、ペース走時の心拍数、1200m走などをデータ集積し後付で、「ジョギング時の心拍数は○○が適当」と回答を導き出さなければ信頼できる指標が示せないことになりますが、これでは方法が逆転してしまうことになります。

主観的感覚に従うボルグスケール

ボルグスケールとランニングなどの相関表

ボルグスケールとランニングなどの相関表

こんな問題を簡単にある程度の正確性を持って解決してくれる指標があります。それがスウェーデンの心理学者、グンナーボルグが作成した「ボルグ・スケール」です。運動強度を主観的感覚で強度分類するというアナログな方法ですが、人の知覚はなまじの機械に負けません。かなりまっとうな結果が出ます。
簡素化版の『新(修正)ボルグスケール』は下記のような表です。

『新(修正)ボルグスケール』

0 なにも感じない
0.5 非常に弱い
1 かなり弱い
2 弱い
3 中等度に弱い
4 やや強い
5 強い
6 
7 かなり強い
8 
9 
10 非常に強い(最大限)

ボルグスケールと対応するランニングや心拍数

このスケールをランニングに適用した場合、どのような走りが該当するのか検討してみました。さらに「トレーニング目的」を対応させ表としました。

表の説明をしましょう。
一番左の列はボルグスケールのレベルです。

そのすぐ右の列はボルグスケールのレベルに該当するランニングの種類です。注意して欲しいのは、表の下に書きましたがLSDとジョギングの関係についてと、インターバル走についてです。
最下段に「死ぬ気で走るラスト(危険)」としましたが、リミッターを外れるところまで追い込むと訓練したアスリートは耐えられても鍛え方の少ないランナーには危険領域だということです。実際に、マラソン大会でもフィニッシュ直前直後に数々の死亡事故が生じています。無理はいけません。

目的に合ったレベルで走ろう

超スロージョギングは、0.5のLSD相当

超スロージョギングは、0.5のLSD相当

その右列は、どのような目的に合致しているかということです。
例えば、健康を維持するためならばボルグスケールレベル「0.5~1」が良いということになります。レベル「4~10」となると必ずしも健康維持に適しているとは言えません。有害なこともあります。
体重を減らしたいならレベル「2~3」です。それ以下でも以上でも体重が減らないわけではありませんが、このレベルが無理なく効率的に体脂肪を燃焼させられるということです。
レベル「8~10」は空白ですが、基本的にはスピード養成に向いています。しかし、表の下の注に書きましたように設定次第で持久力養成にも効果があります。

心拍数は参考値に
その右側の4列は、それぞれのレベルに相応すると考えられる心拍数の計算式と、計算例を載せました。心拍数によるトレーニングレベルの評価は、心拍数に年齢や運動経験、先天的な体質などによってかなりの幅があるために指標が出しにくいものです。
一般的な計算法として、最大心拍数=220−年齢 という数式がうたわれていますが、有酸素系の運動経験豊富な方にはかなりの誤差が生じるでしょう。
この表は過去の様々な知見からこんなところではないかという経験値をもとに作成したものです。±5%程度の幅の中で参考にしていただけたらと思います。

ビルドアップ、ペース走、インターバル、タイムトライアル
次ぎに、マラソンを目標にした時の練習方法としてよく用いられる「ビルドアップ走」「ペース走」「インターバル走」「タイムトライアル」について説明します。

【ビルドアップ走】
同じ力量を持った練習仲間は宝

同じ力量を持った練習仲間は宝


「ビルドアップ走」は次第にスピードを速めていく走り方です。スピード感覚をつかむのとマラソンのペースとして理想的な後半型の走りを身につける上で効果的です。体が温まるにつれてスピードを上げるという生理学的にも無理のない走り方だといえます。
マラソン練習としての「ビルドアップ走」といった場合、レースの目標タイム5時間~3時間に対して、距離は10km~25ないし30kmぐらいとなります。走り出しは、ウォーミングアップが済んでいるならレベル「3」から入りますがウォーミングアップも兼ねた走り出しならレベル「2」からということになるでしょう。最終的にはマラソンのレースペースより早いレベル「5」まで上げるのが理想です。「6」「7」まで上げるのはかなり疲労を残すことになると思います。

【ペース走】
「ペース走」は、なるべく一定のペースで走ることであり設定するスピードは自由ですが、目標とするレースがあるならそのレースで想定している完走タイムを元にし、そのレベルで走れるスピードの10%増し程度までのスピードが適当です。
例を上げますと、マラソンの完走タイムを4時間ちょうどと設定した場合、42kmをペース走するなら4時間24分、21kmのペース走ならフルマラソン4時間のランナーが走れると思われるハーフマラソンのタイム1時間52分の約10%増しの2時間3分程度と言うことになります。同一ランナーのフルマラソンのタイムとハーフマラソンのタイムの相関関係については次回に詳しくご紹介します。

【インターバル走】
マラソン目的のレストはマラソンペースぐらいを保つ

マラソン目的のレストはマラソンペースぐらいを保つ


「インターバル走」は、スピード持久力を養成するために行います。中長距離種目のためのインターバル走は、最大酸素摂取量と乳酸性作業閾値を上げ持久速度を高める目的で行うというのが基本的な考え方です。中距離までの目標レースに対する練習として考えると、スピード養成の意味合いが大きくなり、1回の距離を短くして回数も少なく、その代わりスピードを上げるという内容になりますが、フルマラソンのためのインターバル走は、5000m走程度の速度でロング(1500~2000m)とし、レスト(400~800m)はあまり落とさずフルマラソンのレースペース程度にとどめます。1000m程度ならレストは400m程度にとどめかつ本数を増やします。注意すべきは、はじめに早く入りすぎて2本目以下が急激に落ち込んでしまうようなペースです。レスト時にフルマラソン時のペースを維持できないようなら早すぎるといえます。

【タイムトライアル】
「タイムトライアル」は、まさに本番を前にしての挑戦的試みです。その時の走力を見極め、本番レースのペースを設定するためにぜひ行っておきたいものです。本番並みに挑みますから、フルマラソンのためのタイムトライアルをフルマラソンの距離で行っては大きな疲労を残してしまいます。フルマラソンのためのトライアルの距離としては、ハーフマラソンが適当だと思います。
スケジュール的には本番までに疲労がすっかり消えるように大会の2週間~3週間前がいいでしょう。
想定タイムは、フルマラソンの目標タイムから導き出されるハーフマラソンのタイムですが、それに固執する必要はありません。想定より記録が良ければフルマラソンの目標タイムを短縮できますし、思ったように走れなかったら、そのタイムを基準にしてフルマラソンの目標タイムを遅く修正するまでのことです。