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壁を乗り越え映画化『風が強く吹いている』(3ページ目)

直木賞作家三浦しをんさんの小説『風が強く吹いている』が映画化され10月31日に全国ロードショー。映画化が困難と思われた数々の壁を乗り越え、見事に映像化しています。そのリアリティさに拍手。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド

ランニングファンを泣かせる名セリフが……

TVでおなじみのシーンも随所に
TVでおなじみのシーンも随所に
エースカケルは駆けに駆ける
エースカケルは駆けに駆ける
もうひとつランニングファンを泣かせるのが、原作にもある数々の名セリフ。過労から倒れたハイジに附き添うカケル。速く走ることに集中するばかりのカケルにハイジは問いかけます。

「長距離選手に対する、一番の褒め言葉って何かわかるか?」
「速い……?」
「俺は、強い、だと思う。速さだけじゃダメだ。そんなのは虚しい」

競技にかけるカケルの気持ちが今ひとつわからなかった秀才のユキ。箱根の山下り6区を任されグングン飛ばしている時に、カケルが平地を走っているときはきっとこんな気持ちなのだろうと、カケルを理解できたような気がします。その部分を小説から引用しましょう。

そうか、これはふだん、走(カケル)が体感している世界だ。ユキは胸が詰まる思いがした。
走、おまえはずいぶん、さびしい場所にいるんだね。
(中略)こんな速度で走ることを許されたら、たしかに中毒のように耽溺してしまう。もっと速く、もっとうつくしい瞬間の世界を見てみたい、と。
(『風が強く吹いている』新潮文庫より)

速く、遠くまで走れるようになると距離感とか、時間の感覚が違ってきます。走り続けていると人生観も変わってきます。どのように変わるかはひとそれぞれでしょうけれども。ランナーは、ランニングをしない人には知り得ようがない世界を持っている、大事なシーンを映画もよく描写していると思いました。

原作を読んでも、よくランナーの心情をつかんでいると感心しましたが、それが映像になり音になるとさらに胸を打ってきます。
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