サブスリーランナーのトレーニング・体づくりとは? 

サブスリーランナーのトレーニングと練習スタイル

サブスリーランナーのトレーニングと練習スタイル


マラソンというスポーツは体作りの競争のようなところがあります。スポーツは多かれ少なかれ体が強弱に関係していますが、マラソンは特にフィジカルな要素の比重が高いスポーツです。

では、どのようなところが「体作り」の競争であり、どのような体がマラソン向きなのでしょうか?

サブスリーランナーの体は軽い方がいい

レーシングカー
走りに必要ないものは徹底的にそぎ落とすレーシングカー。ミラーもライトもない
マラソンは体を移動させるスポーツですから、体重は軽いほうが適しています。物理学的な法則に従えば、体重が10%重くなれば体を運ぶ能力は10%低化します。同じ距離なら10%余分に時間がかかり、速度が同じなら移動距離が10%短縮されるわけです。ただし、これは筋肉や内臓の能力は同一だとしての話ですから、体重の低化と共に筋力も落ちたりするとこの通りにはいきません。

そこで、なるべく体脂肪だけを落とすようにします。もちろん体脂肪は生命活動にも必要ですし、マラソンを走る上でエネルギー源となるものですからゼロというわけにはいきません。国際的な男子のトップランナーで4~5%、女子ランナーで5~6%といわれます。それでは市民ランナーの場合はどうでしょうか?

アンケート調査などすると面白いと思いますが、とりあえず、私の周囲のさまざまな層のランナーに聞いた所では、フルマラソンで2時間40分を切るようなランナーですと6~8%くらいになっているようです。サブスリーレベルですと幅があって10~14%くらいでしょうか。4時間30分くらいですとさまざまで、中には20%程度と、標準レベルクラスの体脂肪率の方もいます。体脂肪率1%の重さはもちろん体重の1%の重さです。体重60kgの人なら600gです。2%で1.2kgになります。1.2kgを背負って走ってみると、やはりその重さを負担に感じると思います。5%、3kgも体重を減らしたら、跳ぶような感覚がするでしょう。
 

サブスリートレーニング! 筋肉を強化し体脂肪を落とす

体重が減るとどのくらい効果的なのか、最近の私自身の例をご紹介しましょう。

2006年の富士登山競争(7月28日実施)では久しぶりに4時間を切ろうという目標をたてました。例年富士登山競争向けのトレーニング(主として坂道走で、上りに力を入れる)は、4月の半ばぐらいから始めます。これは、春の東京・荒川市民マラソンの疲れを抜いて、新たなチャレンジ精神で練習を開始するのがその頃になるからです。大会まで通常は約3ヶ月(今年は大会が7月の末に近かったのでやや長めだった)の準備期間があるわけです。

冬の間は、平坦なコースでの練習が多く、体も平坦向きにもどってしまっているので、シーズンはじめの坂道の練習はきついものがあります。今年は、前年の山トレを終了した時期が早く、坂道練習の空白期間が長かったので、例年以上に上る力の低下を感じました。

そこで、坂道のトレーニングもさることながら、加えて体重を例年以上に落とすことにしました。67~69kgを示している体重を、63~65kgと4kg程度落とす目標を立てました。1ヶ月あたり1.3kg、1日あたり約40g強、距離にすると1日の走行距離を4kmぐらい延ばさなければなりません。しかし、すでに月間300km前後走っている身にとって、1ヶ月当たり120kmを延ばすのは大変です。とても実現できそうにない数字です。そこで練習の内容を、登坂能力をつけるトレーニングと体脂肪燃焼トレーニングだけに特化することにしました。

登坂能力をつけるトレーニングは、坂道走+筋トレ(スクワット、カーフレイズ、シットアップ、腕振り)です。ダイエットを目的としたトレーニングは、LSD(ロング スロー ディスタンス=ゆっくり長距離走)です。そこで、平日でも週に1、2回は20km以上の距離をそう苦しくない程度の速度で走りました(私の場合は、5kmを24~25分のペースです)。これは有酸素運動によって、体重を落とすことを第一の目的に置いたランニングです。他のランナーに抜かれても対抗心を燃やして張り合わないというトレーニングは、ややストレスになりますがやむを得ません。

登坂練習は、週末は山、平日は事務所近くの冬青木坂(もちのきざか 千代田区のホテルグランドパレスの脇にある坂)という、車の通過が少ない高低差がビル7階分くらいの坂を使いました。東京での坂トレにおすすめです。
 

満腹感があって栄養バランスもいいミューズリ

ミューズリ
なんだかペットフードのような。入れる食材を組み合わせれば、理想に近い栄養配分にできるだろう。このフルーツナッツミューズリーに含まれる原材料は、オート麦フレーク、小麦フレーク、干しぶどう、ライ麦フレーク、ライスフレーク、ひまわり種子、コーンフレーク、ココナッツ、カシューナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツの11種類
練習内容を変えただけでは体重の減り方は遅々としたものなので、食事も考慮することにしました。夜と朝は女房まかせなので、私だけ別メニューという贅沢が許されそうもありません。残された昼食のカロリーを落としました。といっても満腹感とビタミンB類を摂らないとその後の練習に差し支えるので、いろいろと考えた末「ミューズリー」という、シリアル食品を使うことにしました。

ミューズリーの発祥の地はスイスだとか。押しつぶした麦とドライフルーツ類がミックスされています。ここに低脂肪牛乳をかけて食べるという味気ないものです。麦はけっこう固く、かなり力を入れて噛まなければならないので、一般的なカリカリ、サクサクのシリアル食品より食べるのによほど時間がかかります(ミューズリーとその食べ方についてはオールアバウトに記事があります。末尾の関連リンクを参照してください)。

精白をしていない麦なのでビタミンB類はたっぷりです。食物繊維も多く、これを2日ぐらい食べると、便が豪快に出るようになります。便秘気味の人は試してみてください。ただし、トレーニング中にも催すことが多くなるので、レース間近になったらおすすめしません。

カロリーは意外にあって、100gあたり348kcalと表示されています。私がよく食べるフルーツ&ナッツミューズリー250gと低脂肪牛乳300ccを合計すると約1,000kcalになります。量が多いとはいえ、唐揚げ付きハンバーグ弁当ぐらいのエネルギー量です。それでも通常の外食より、100kcal程度は少ないのではないかと思います。100kcalは、トレーニング量に換算して1.5km程度のジョギングに相当しています。

ミューズリーは「まさにスローフード」という感じで、夕方になってやっと消化されたかな、というくらいのお腹感覚です。このもたれ感がいいのか、昼にミューズリーを食べた日は夕食の量が以前より少し減りました。

アルコール量も焼酎お湯割り1杯を減らして、夕食+晩酌を合計すると150kcal程度落としました。これはトレーニング距離換算約2.3km。昼食の分と合計すると3.8km走る分に相当します。目標の1日4km分にかなり近づいています。筋トレを増やしたことを考えると充分目標値に達しているといえるでしょう。そして実際に、毎月1kgと少々の体重を減らし、7月中旬には体重は63.3kg~65kg程度、体脂肪率10.8~11.5%ぐらいの間に納まるようになりました。体脂肪率は3%程度の低下です。
 

坂道走で減量効果を実感

こんなふうに工夫して減量を果たしました。体重がそれほど減らなかったのは、筋トレをして筋肉が増えたためと考えられます。

レースまでの3ヶ月余り、ポイント、ポイントに長い登り坂がある山を走ってみましたが、回を重ねるごとに減量の効果を感じました。本番のレースでは、目標通り、4時間を切りました。3時間57分30秒です。ただ、あまりに上り坂に特化した練習をしていたためか、レース前半の「走る部分」でスピードが上がらず、五合目のタイムでは4時間を切るのは無理かな?といささか自信を失うようなありさまでした。五合目からは傾斜もどんどんきつくなる反重力レースですから、ダイエットが大いにものをいったわけです。

ちょっと自慢話をしちゃいました。こんな話をしたのは、体は3ヶ月くらいでもかなり変化するものだし、サブスリーを狙うには、「フルマラソンをサブスリーで走れる体」に仕上げなければならない、ということを頭に入れておいていただきたかったからです。
 

サブスリーを目指すなら1日10km以上走る!

在りし日の食卓
減量中の在りし日の夕食。アジの梅・大葉巻き、もずく酢、ジャガイモと油揚げとキャベツの煮浸し、冬瓜の挽肉あんかけ、枝豆(枝豆は夏の間ずう~っと欠かさない)、奥に見栄を張ってビールがあるが、普段は低カロリーの発泡酒、手前左は泡盛のお湯割り(減量中は1杯だけ)、これに実だくさんのみそ汁とご飯
ここで、どのくらい走るとどのくらいやせられるのか気になるでしょうから、説明しましょう。

私は以前市民ランナーにお願いして、体重維持の境目になる走行距離はどのくらいなのか、アンケートを取ったことがあります。その結果は、比較的よく走る人(フルマラソンを3時間30分以内くらいで走れる人が多い)は1日平均8~9km程度でした。4時間ぐらいかかる人になると6km程度でした。

10km走ると、体重(ウエア、シューズともで)60kgの人で約600kcalを消費します。体重にして約85g分です。年齢にもよりますが、基礎代謝に必要な1日のエネルギー量は、成人男性で1,500~1,200kcal、成人女性で1,000~1,250kcalぐらいです。走る以外の運動量が歩行に換算して1日4km程度あるとすると240kcal。基礎代謝量が1,200kcalの場合、合計すると2,040kcalになります。これだけのエネルギー量の食事は、運動をほとんどしない一般人にとっては、わずかですがオーバーカロリーになります。

そして、一流選手になると、消費するエネルギー量も摂取するエネルギー量もけた違いです。一流選手はみんなやせていますから体重を55kgに設定しましょう。1ヶ月に1,000km走るとして1日33kmになります。そのエネルギー消費量は約1,800kcal超、これに基礎代謝量(たいてい若いので基礎代謝量も多い)とその他の運動(日常活動以外に筋トレもする)で2,000kcalを消費すると、合計3,800kcalになります。一般人の倍のエネルギーを取らなければなりません。

これだけのエネルギーを食事でまかなうとなると、考えもせずにただ量をたべればいいというものではなくなります。たくさん食べた結果腹がもたれてトレーニングができないのも困りますから、胃腸も丈夫でなければならないけれども、いかに消化の良い食材を選び消化がよい調理法をするかという技術も必要になります。食事に関する知識は専門家はだしになる必要があるでしょう。

さて一流選手ほどではないにしても、サブスリーを目指すなら、1日2,500kcalぐらいの食事は摂り、それでも太らないトレーニングをすることです。その境目は1日10km以上です。私の場合だと、朝は400kcal程度、昼は1000kcal程度、夜は800kcal程度、これにアルコールと肴で600kcal程度、合計2800kcal程度になっているかなと思います。

ランナーの場合、食事をちゃんと摂らないと疲れが残りますから、食事の内容は考えるにしても、栄養を落としてしまうダイエット法は不可です。しっかり食べてその分体を動かすことです。事情があって練習ができないときだけ、炭水化物やアルコール、脂肪など高カロリーの食品を控えます。
 

マラソンの走りに邪魔な筋肉は発達させない

ブロンズ像
戦闘には向いていても、この体では10km走るのも容易ではない。マラソンランナーにはマラソンランナーの体型がある
次に体型です。走るのに不要なものは少ないほうがいい、バックミラーもシートのクッションも内装も取り去ってしまうレースカーを思い起こしてください。とはいうものの人の体から取ったり外したりできませんから、少しずつ変化させていきます。
 

四肢は根元太く先細りが理想

太鼓腹型はもってのほかとして、時々見かけるのは上半身が筋肉隆々型の人。おそらく、他のスポーツを主にしていてマラソンにも挑戦された方だとは思いますが。

胸の前後の筋肉(大胸筋、僧帽筋など)はさほど必要ありません。スイマーや格闘技系アスリートのように上半身筋肉モリモリなんていうのは最悪です。もともとランニングシャツは細身にできていますが、これがピチピチだったら、サブスリーを狙うランナーとしては肉が付きすぎているといってよいかもしれません。

腕は肩の付け根だけ(上腕二頭筋など)やや筋肉が必要ですが、あとは指先へ向かってほっそりとしているほど結構です。

ウエストから腰を中心とした体幹はぎゅっと締まっているのが可。脂身が消え、筋肉が田の字型に浮き出ているという状態です。外からはよく見えませんが下腹部からついている腸腰筋にはじまって足の筋肉はみな大事。ただ腰に近づくほど発達し、足先に近づくほどほっそりしているのが理想です。一流のマラソンランナーは誰もが細身ですが、上半身に比べて太ももの付け根あたりは相当に発達しています。やせこけているように見えるケニア選手でも、大腿部の付け根は実に太くてがっちりしています。野口みずき選手の太もももすごいです。
 

内臓を動かす筋肉も強化

実は血管にも筋肉があります(平滑筋)。呼吸も筋肉(横隔膜、肋間筋、腹筋など)で成り立ちます。お腹に手を当てて激しく呼吸をすると、体表に近い筋肉だけですが筋肉の動きがわかります。体の内部の機能強化の筋トレも忘れてはいけません。

呼吸力の強化は、どこでもできます。大きく早く吸ったり吐いたりするだけで結構です。走らずにただスースー、ハーハーを激しく続けるだけでも呼吸が苦しくなります。呼吸を大きくしていても呼吸が苦しくなるのは不思議ですが、それは筋肉が酸素と栄養分を要求しているからです。シットアップによる腹筋強化も忘れずに。

心臓ももちろん心筋という筋肉によって動きます。心筋の強化は、心臓を使うトレーニングによるほかなさそうです。ただし、限度を超えると心機能が停止するという最悪の事態になります。一般に 220-年齢=最大心拍数 で、運動強度70%ぐらいが有酸素運動としては効果的とされますが、心筋の強化ということになると80~90%になるかもしれません。ただし、年齢が上がるほど、心臓に負担をかけることがリスク増になります。シニアの方は、せいぜい70~80%の強度まで(感覚的には「ややきつい」程度)にしておきましょう。

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