ランニングファンを泣かせる名セリフが……
TVでおなじみのシーンも随所に |
エースカケルは駆けに駆ける |
「長距離選手に対する、一番の褒め言葉って何かわかるか?」
「速い……?」
「俺は、強い、だと思う。速さだけじゃダメだ。そんなのは虚しい」
競技にかけるカケルの気持ちが今ひとつわからなかった秀才のユキ。箱根の山下り6区を任されグングン飛ばしている時に、カケルが平地を走っているときはきっとこんな気持ちなのだろうと、カケルを理解できたような気がします。その部分を小説から引用しましょう。
そうか、これはふだん、走(カケル)が体感している世界だ。ユキは胸が詰まる思いがした。
走、おまえはずいぶん、さびしい場所にいるんだね。
(中略)こんな速度で走ることを許されたら、たしかに中毒のように耽溺してしまう。もっと速く、もっとうつくしい瞬間の世界を見てみたい、と。(『風が強く吹いている』新潮文庫より)
速く、遠くまで走れるようになると距離感とか、時間の感覚が違ってきます。走り続けていると人生観も変わってきます。どのように変わるかはひとそれぞれでしょうけれども。ランナーは、ランニングをしない人には知り得ようがない世界を持っている、大事なシーンを映画もよく描写していると思いました。
原作を読んでも、よくランナーの心情をつかんでいると感心しましたが、それが映像になり音になるとさらに胸を打ってきます。